Theme 新しいドラッグデリバリーシステムによる抗悪性腫瘍薬 Cancer biology and new seeds
抗体-薬物複合体の治療効果を高める戦略
がん分子標的治療 Vol.19 No.2, 56-59, 2022
抗体ー薬物複合体(ADC)は,最近,トラスツズマブ デルクステカンやポラツズマブ ベドチンなどこれまで以上に有用な薬剤が出現し,注目を集めている。しかしADCは,複雑で多段階の作用機序をもち,小分子の殺細胞性抗がん剤とは趣を異にする“クセの強い”薬剤である。作用機序が多段階で構成されるため,最大効果が発揮されるために至適化されるべき点が多数存在しており,これらが薬剤耐性機構へ結びつく。そして,耐性を克服するための手がかりも,まさに,この“多段階のステップ”に存在する。われわれはこれまで,併用薬剤によって,標的抗原量,リソソームにおけるリンカー消化,ペイロードのDNAへのインターカレーション,薬剤汲み出し,などのステップを改善し,ADCの殺細胞効果を増強する方法を開発し報告してきた。本稿ではADCの構造と作用機序からみた耐性機構,そしてその克服へのヒント(育薬のヒント)に至るまでを概説する。
「KEY WORDS」抗体ー薬物複合体(ADC),mTOR,リソソーム,耐性機構
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。