これまで,分子標的薬の創薬によって,特定の遺伝子異常があるがん患者に治療効果が還元されてきた。しかし,ヒトのがんで最も多くみられるrat sarcoma virus(RAS)遺伝子異常に対する治療薬はこれまで30年以上創薬が困難であった。近年,第Ⅰ,Ⅱ相臨床試験(CodeBreak100)の結果からKRASG12C変異に対してsotorasib(AMG510)が臨床的効果と安全性があることが示唆され,現在第Ⅲ相無作為比較臨床試験が行われている。本稿ではこれまでのRAS遺伝子異常に対する治療の失敗から,KRAS阻害薬の現状,また今後の治療戦略について述べる。