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早期乳がんに対する2つのCDK4/6阻害薬 第Ⅲ相臨床試験の結果から:PALLAS試験とmonarchE試験

名取穣佐治重衡

がん分子標的治療 Vol.19 No.1, 112-115, 2021

1970年代にホルモン陽性乳がんに対する内分泌療法が始まって以来,約50年の歳月を経て,2018年に新たな作用機序をもつCDK4/6阻害薬がホルモン陽性乳がんに対する治療薬として臨床現場に登場した。CDK4/6阻害薬は,エストロゲン刺激の下流にある細胞分裂の細胞周期を抑制することで細胞増殖を抑える。現在では,内分泌療法にCDK4/6阻害薬を併用する治療が,進行・再発ホルモン陽性・HER2陰性乳がんに対する標準治療となっている。本邦ではCDK4/6阻害薬として,パルボシクリブとアベマシクリブが使用可能であり,効果そのものには明らかな優劣がついていないため副作用の違いなどを考慮し使用されている1)2)
早期乳がんに対する術後治療としては,内分泌療法はホルモン陽性乳がんの再発を約40%抑制することができる3)。しかし依然として,内分泌療法でも化学療法でも再発を防げない患者群が一定の割合で存在し,これらの薬剤と異なる作用機序をもつCDK4/6阻害薬に期待が寄せられた。2020年,ホルモン陽性・HER2陰性乳がんの手術後再発の抑制を目的として,標準的な術後内分泌療法にCDK4/6阻害薬を上乗せした効果を比較する2つの大規模臨床試験の中間解析が報告された。パルボシクリブを用いたPALLAS試験では再発抑制効果が認められなかったが4),アベマシクリブを用いたmonarchE試験は有意に再発抑制効果が認められた5)。両薬剤はCDK4およびCDK6という蛋白質に主たる作用起点をもつが,異なる薬物であり,臨床試験の対象群設定も異なる。本報告ではこの2つの試験について取り上げ,対照的な結果となった要因について考察を試みる。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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