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Theme がんゲノム医療を検証する Cancer biology and new seeds

CD47および関連分子を標的としたがん治療の可能性

齊藤泰之村田陽二的崎尚

がん分子標的治療 Vol.19 No.1, 82-88, 2021

がん細胞は腫瘍周囲に存在する免疫細胞との相互作用を介して免疫監視機構から逃れると考えられており,免疫応答の制御ががんの新しい治療戦略として注目されている。T細胞やNK細胞に加え,近年自然免疫細胞であるマクロファージや樹状細胞が重要視されている。マクロファージや樹状細胞に高発現するsignal regulatory protein α(SIRPα)は,標的細胞に発現するCD47と結合することで(CD47-SIRPαシグナル),標的細胞の貪食を阻害することから,自然免疫系のチェックポイントとして認識されつつある。近年,さまざまながんでCD47の高発現が報告され,CD47-SIRPαシグナルを標的とした新たな分子標的療法の有効性が動物モデルにより実証されてきた。現在CD47やSIRPαを標的とした薬剤の開発が進んでおり,造血器腫瘍や固形腫瘍に対するさまざまな臨床試験が行われている。本稿では,がんにおけるCD47-SIRPαシグナルに加え,これまで開発されてきたCD47もしくはSIRPαを標的とした薬剤の特徴とその臨床試験の状況について概略を述べる。
「KEY WORDS」マクロファージ,樹状細胞,抗体依存性細胞貪食,CD47,SIRPα,免疫チェックポイント

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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