Theme がんゲノム医療を検証する Cancer biology and new seeds
ATMとがん治療の可能性
がん分子標的治療 Vol.19 No.1, 79-81, 2021
ATMは毛細血管拡張性運動失調症(ataxia-teleangiectasia)の原因遺伝子として見出された遺伝子で,350kDのserine/threonineキナーゼであるATMをコードする。ATMはDNA損傷応答に重要な役割を果たし,MRN複合体により自己リン酸化した単量体として損傷DNA部にリクルートされ,H2AXをリン酸化し,さらにCHK2,p53,MDM2,BRCA1,CtIPなどをリン酸化することで細胞周期停止および主として相同組換え修復(HRR)を誘導する。ATMは活性酸素刺激応答にも関与することが示されている。各種がんではATMの機能喪失性変異が認められる。ATMを含むHRR関連分子の機能不全(HRD)はゲノム不安定性,腫瘍遺伝子変異量増大を呈し,そのようながんでは免疫チェックポイント阻害薬が奏効する。また,HRDを呈するがんにはPARP阻害薬が高い効果を示す。ATM阻害薬は細胞の放射線感受性を高めることが示されており,臨床試験が行われている。
「KEY WORDS」ATM,DNA二重鎖切断,相同組換え修復,腫瘍遺伝子変異量,PARP阻害薬
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。