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News and Topics

併用療法の統計学

坂巻顕太郎山中竹春

がん分子標的治療 Vol.18 No.2, 112-114, 2020

抗がん剤の治療効果を評価する際,全生存期間(overallsurvival;OS)や無増悪生存期間(progression free survival;PFS)などの生存期間が評価項目(endpoint)として用いられる。治療群などの集団における生存期間の分布を表現する生存曲線は,一般に,カプラン・マイヤー法を用いて推定される。免疫療法や分子標的治療の登場以前は,ログランク検定による生存曲線の群間比較や,Cox回帰によるハザード比の推定(生存曲線の群間比較の要約)が一般的であった。ログランク検定やCox回帰は,時間の経過とともにハザード比(治療効果)が変化しないという仮定(比例ハザード性)のもとでは最適な方法である。しかし,治療効果の遅延や治療効果の異なるサブグループの存在などにより,免疫療法や分子標的治療に対する臨床試験では比例ハザード性が仮定できない場合がある。そのため,生存曲線の比較,生存曲線の要約や治療効果の推定に関して,新たな方法を用いることが議論されてきた1)-3)。免疫療法や分子標的治療を用いる併用療法でも問題は同様であるが,生存曲線に関する仮定には注意が必要である。本解説では,比例ハザード性が成立しない場合の,生存曲線の特徴,解析方法,併用療法における注意点を述べる。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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