Learn more from previous clinical trial
CDK4/6阻害薬の人種差
がん分子標的治療 Vol.17 No.2, 80-85, 2019
2019年のAmerican Society of Clinical Oncology (ASCO) Annual Meetingでは,閉経前ホルモン受容体陽性かつHER2陰性進行乳がんにおけるCDK4/6阻害薬ribociclibと内分泌療法併用の全生存期間(OS)が,内分泌療法のみに比べて有意に延長したという治験結果が話題を集めた1)。しかし,この国際共同第Ⅲ相ランダム化比較試験(MONALEESA-7)に日本は参加していない。Ribociclibの第Ⅰ相試験は日本を含むアジアにおいて実施されていたが,2017年10月に開発企業であるノバルティスファーマは日本国内で計画していた新たな治験を実施しないことを発表した。その主な理由として,他のCDK4/6阻害薬(パルボシクリブ,アベマシクリブ)の開発が国内外で先行していたことが挙げられているが,日本人でのribociclibの忍容性の低さも一因とされている。
医薬品規制調和国際会議(International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use;ICH)のE5ガイドライン「外国臨床データを受け入れる際に考慮すべき民族的要因についての指針」では,医薬品の効果(特定の用法・用量における有効性および安全性)に与える民族的要因について,人種としての遺伝的特徴のみならず生理学的特徴も含めた内因性要因と,文化的・環境的特徴である外因性要因が示されている(表1)2)。そこで本稿では,これらの要因にも着目しながら乳がん治療におけるCDK4/6阻害薬について,海外と日本で実施された治験結果に対する医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査報告書3)4)の記載をもとに人種差の有無に関して概説していく。
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。