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Cancer biology and new seeds

多発性骨髄腫のがん微小環境における炎症と免疫抑制

中村恭平

がん分子標的治療 Vol.17 No.2, 66-69, 2019

がんを促進する炎症と宿主免疫応答からの回避は,「がんのホールマーク」として確立されている。がん微小環境における慢性的な炎症は免疫抑制細胞を誘導する引き金となり,2つのホールマークが密接に相互作用することで腫瘍の進展を促進している。多発性骨髄腫(MM)は,主として骨髄内で進展する形質細胞腫瘍であり,骨の破壊や腎障害,免疫抑制などの全身症状を引き起こす。近年の治療の進歩によりMMの予後は向上しているが,依然として難治性の造血器悪性腫瘍である。ここ数年,抗体薬をはじめとした宿主免疫応答の活性化を促すMM治療薬が良好な臨床効果を示していることから,免疫療法が有望な選択肢として期待されている。しかしながら,骨髄腫がいかに宿主免疫応答を回避し,増殖に有利な微小環境を形成しているのか,根本的な機序は十分に明らかにされていない。本稿では,筆者らが最近明らかにした,骨髄腫の炎症と免疫抑制のメカニズムに関する知見,および骨髄腫T細胞における免疫チェックポイント分子を中心に解説する。
「KEY WORDS」多発性骨髄腫,炎症,がん微小環境,免疫抑制,免疫チェックポイント分子

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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