Cancer biology and new seeds
新規Ca²⁺チャネルTRPA1はがん細胞の酸化ストレス耐性を担う
がん分子標的治療 Vol.17 No.2, 62-65, 2019
酸化ストレスに対する防御機能は,腫瘍の進行および治療抵抗性に大きく関与しており,がん細胞の「アキレス腱」,つまり急所であるといえる。がん酸化ストレス研究の現状は,主に活性酸素種(ROS)を消去する系(抗酸化系)に焦点が当てられている。しかし,抗酸化機能が強化されているにもかかわらず,がん細胞は顕著なROSレベルを示し,ROSの上昇に耐えることができる追加のメカニズムの存在が示唆されていた。2018年にわれわれは,神経系におけるROSセンサーであるTRPA1チャネルが,多くのがん種において過剰発現しており,非標準的(non-canonical)な酸化ストレス防御機構を誘導することを見出した。TRPA1は,従来から知られている抗酸化系に影響を及ぼさないが,ROSを感知し,Ca²⁺依存的な抗アポトーシス経路の活性化を介して酸化ストレス耐性を亢進する。このように,がん細胞は酸化ストレス防御機能を促進するために,神経系のROSセンサーを選択するという革新的かつとても興味深い機構をもつことが明らかになった。
「KEY WORDS」TRPA1チャネル,酸化ストレス防御,アポトーシス,Ca²⁺シグナル,治療抵抗性
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。