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Round Table Meeting

抗体―薬物複合体の臨床

南博信伊豆津宏二岩田広治安永正浩

がん分子標的治療 Vol.17 No.2, 41-49, 2019

造血器腫瘍および固形がんにおいて,抗体−薬物複合体(ADC)の開発が進められている。ADCは,腫瘍細胞に発現する抗原を標的とした抗体とペイロードとしての抗がん薬をリンカーで結合させた薬物である。腫瘍特異性が高く,副作用の軽減が期待されている。多数のペイロードとリンカーが開発され,その組み合わせも多岐にわたる。造血器腫瘍ではゲムツズマブオゾガマイシン,ブレンツキシマブ ベドチン,イノツズマブ オゾガマイシン,乳がんではトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)がすでに日本でも承認されている。
開発中のADCも多く,造血器腫瘍ではpolatuzumab vedotin,固形がんではヒト上皮成長因子受容体(HER)2に対するtrastuzumab deruxtecan(DS-8201a)やHER3に対するU3-1402が有望視されている。HER2陽性の固形がんを対象としたDS-8201aの第Ⅰ相臨床試験では腫瘍縮小効果が認められ,乳がんではHER2高発現例だけでなく,HER2低発現例でも効果がみられた。またheterogeneityが強い胃がんでもDS-8201aは期待されている。
ADCはドラッグデリバリーの観点からも注目され,薬物によってはバイスタンダー効果や免疫原性細胞死(ICD)によって持続的な効果が可能になると考えられている。
がん領域において現在は免疫療法やゲノム医療が脚光を浴びているが,今後,日常臨床においてADCは幅広く使われるようになると考えられる。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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