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Theme 新しい抗体薬;ADC

乳がんに対するADC

名取穣佐治重衡

がん分子標的治療 Vol.17 No.2, 20-24, 2019

抗体−薬物複合体(ADC)は,抗原特異的な抗体にリンカーを介して殺細胞性抗がん剤などの低分子医薬を結合させた医薬品である。ADCは両者を組み合わせることで高い選択性をもってがん細胞を障害する。乳がんに対するADCとして,トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)が,ヒト上皮成長因子受容体(HER)2が高発現している乳がんの治療で実際に用いられており,HER2の細胞増殖シグナル抑制作用をもつトラスツズマブが無効となった乳がんに対しても治療効果を発揮する。現在,約50品目の乳がんを対象としたADCが前臨床研究に進み,そのなかの18品目が臨床研究段階にある。ADCの出現により,抗体医薬の応用的な活用法の探求や,開発中止となった低分子医薬の再活用の可能性が見出されており,乳がんに対するADCの開発が発展し,新薬が速やかに治療現場に届けられることが期待される。
「KEY WORDS」抗体−薬物複合体(ADC),乳がん,T-DM1

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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