Pharmacogenomics and biomarker
がん治療開発におけるPDXの活用と展望
がん分子標的治療 Vol.16 No.4, 87-92, 2019
Patient-derived xenograft(PDX)は,がん患者の腫瘍組織を分画せずにそのまま免疫不全マウスに移植するモデルの総称である。PDXではがん細胞株をマウスに移植した従来の前臨床試験モデルと比較して,腫瘍の不均一性や間質・血管構造を含む腫瘍微小環境が患者に近い状態のまま維持されており,従来モデルでは5%程度であった臨床での治療効果予測能を80%以上に向上させるといわれている。国立研究開発法人国立がん研究センターでは,「がん医療推進のための日本人がん患者由来PDXライブラリー整備事業(J-PDXライブラリー)」に着手し,難治性がん,希少がんを含むさまざまな腫瘍からのPDXの作製を進めている。今後,作製したPDXに対して分子生物学的解析やオミックス解析などを行い,がんの病態解析や新規治療標的・バイオマーカーの探索ならびに創薬推進を目指す。本稿では,PDXの作製方法および有用性や課題に関して報告されている知見を概説するとともに,次世代のがん治療開発の中心的役割を担うJ-PDXライブラリーを活用したトランスレーショナル研究(TR)について紹介する。
「KEY WORDS」PDX,J-PDXライブラリー,新規抗がん剤開発,前臨床試験,希少がん,トランスレーショナル研究
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