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Cancer biology and new seeds

がん免疫セットポイント

北野滋久

がん分子標的治療 Vol.16 No.4, 73-77, 2019

免疫チェックポイント阻害薬はさまざまながん種において標準治療となり,適応の拡大が進んでいる。しかしながら,長期的な臨床効果を認める患者は一部に限られるため,バイオマーカーによる治療選択を推進することは臨床的に大きな課題となっている。抗腫瘍免疫応答は,さまざまな因子が空間的・時間的に相互作用する複雑な関係によって成り立つ。治療効果を予測するバイオマーカー研究は単一因子ではなく,治療対象や治療方法ごとに異なった複数の因子を組み合わせたスコアリング化に向かうものと考えられている。
「がん免疫セットポイント」は,がん免疫応答サイクル(cancer-immunity cycle)の①~⑦の各ステップにおいて,各種免疫反応に関わる要素が組み合わさって形成されたものであり,抗腫瘍免疫応答を促進または抑制する因子間の平衡として定義される。したがって,「がん免疫セットポイント」は,がん患者が免疫療法に応答するために超過しなければならない閾値を表している。今後,がん免疫セットポイントという概念によって免疫状態を把握することが臨床研究および臨床開発を推進するうえで有用となるかもしれない。
「KEY WORDS」がん免疫療法,がん免疫セットポイント,腫瘍免疫,免疫チェックポイント阻害薬

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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