<< 一覧に戻る

座談会(Round Table Discussion)

マイクロバイオーム研究の可能性

朴成和福田真嗣工藤千恵砂川優

がん分子標的治療 Vol.16 No.4, 56-63, 2019

各種がん領域において免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が非常に注目されている。しかし,効果が得られる患者は一部であり,稀ではあるが重篤な副作用も報告されている。また医療費の面からも,効果が期待できる患者を選択して治療することが望まれ,そのためのバイオマーカーの探索が積極的に行われている。肺がんなどではPD-L1が効果を予測する因子と考えられ,ほかにtumor mutation burdenやマイクロサテライト不安定性(MSI)なども検討されてきたが,確立したものはまだない。
一方で,近年はマイクロバイオーム(細菌叢)の研究が目覚ましく展開されている。動脈硬化や大腸がんなど各種疾患と腸内細菌の関連性が明らかになり,またそのメカニズムの解明も進んでいる。腸管関連疾患をはじめ糖尿病などの患者に健常者の便を移植する試みも実施されている。さらに,ICIの効果にも腸内細菌が関与することが最近の研究で示唆されている。そのためICIの新たなバイオマーカーとしての腸内細菌の可能性について検討されはじめている。従来のバイオマーカー研究は腫瘍側に着目した研究が多かったが,宿主側の因子に目を向けたバイオマーカー検索のための臨床試験も開始された。がん領域におけるマイクロバイオームの研究は,治療だけでなく予防も目指し,今後の発展が期待される分野である。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る