Cancer biology and new seeds
抗腫瘍免疫抑制による肥満関連肝がんの促進機構と分子標的
がん分子標的治療 Vol.16 No.2, 50-53, 2018
肥満は糖尿病や心筋梗塞だけでなく,さまざまな種類のがんを促進することが指摘されている。筆者らはDMBAを用いた全身性の発がんマウスモデルを用いた研究により,肥満したマウスにおいて肝がんの発症が著しく促進されることを見出した。そして,肥満に伴い増加するグラム陽性腸内細菌は,デオキシコール酸(DCA)を産生し,腸肝循環などを介して,肝臓にDCAを供給するだけでなく,その細胞壁成分のリポタイコ酸(LTA)をも供給していることがわかった。肝臓の間質に存在する肝星細胞においては,DCAにより細胞老化が生じ,さらにLTAによるToll様受容体(TLR)2経路の活性化が, 細胞老化関連分泌(SASP)因子の産生やシクロオキシゲナーゼ(COX)-2の発現上昇,そしてTLR2経路のさらなる活性化を誘導する。COX-2経路により過剰産生されるPGE2は,がん微小環境における抗腫瘍免疫を抑制し,それが肝がんの進展につながる可能性が示された。PGE2の受容体であるEP4は,そのアンタゴニストの予備投与によって肝腫瘍形成が抑制されたことから,新規分子標的の可能性がある。
「KEY WORDS」腸内細菌,肝がん,リポタイコ酸,シクロオキシゲナーゼ-2,プロスタグランジンE2,EP4受容体
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