Round Table Meeting
バイオマーカーの最近のtopics
がん分子標的治療 Vol.16 No.2, 42-49, 2018
分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬ががん治療に浸透していくなかで,より適切で効果的な治療開発に向け,バイオマーカーの研究も進んでいる。
たとえば,免疫チェックポイント阻害薬においては,腫瘍細胞におけるPD-L1発現が進行非小細胞肺がんに対するペムブロリズマブのコンパニオン診断として使われている。しかしながら,がん種によってPD-L1発現のバイオマーカーとしての臨床的意義が異なっていたり,腫瘍細胞に発現するPD-L1が重要なのか,それとも腫瘍組織に浸潤した細胞傷害性Tリンパ球(CTL)に発現されるPD-L1か,どちらをみるべきかといった議論もあり,今後解決すべき課題は多い。一方で,腫瘍細胞のtumor mutation burdenやCD62Lが新たなバイオマーカーとして注目されている。
一方,分子標的薬のバイオマーカーとしては,肺がん領域において上皮成長因子受容体(EGFR)の遺伝子変異やALK,ROS1,BRAFの融合遺伝子の有無が治療方針の決定に用いられている。最近では第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)であるオシメルチニブのコンパニオン診断としてEGFR遺伝子変異T790Mの臨床導入も行われている。血液がんでは慢性骨髄性白血病(CML)のBCR-ABL融合遺伝子がイマチニブ治療の診断薬ならびに効果判定の指標として使用されている。乳がんでは古くからエストロゲン受容体(ER)やプロゲステロン(PG)の蛋白発現の有無がホルモン療法の有効性のバイオマーカーとして用いられてきた。トラスツズマブ治療の診断薬の指標としてのヒト上皮成長因子受容体(HER)2蛋白の過剰発現は固形がんの分子標的治療の先駆けとして有名である。近年はPI3Kの遺伝子変異や生殖細胞のBRCA変異による患者選択が臨床開発されている。本座談会では,がん治療各領域におけるトップリーダーをお招きしてバイオマーカー研究の最近のtopicsを総括した。
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。