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Pharmacogenomics and biomarker

神経膠腫に対するIDH1阻害薬

成田善孝

がん分子標的治療 Vol.16 No.1, 66-69, 2018

イソクエン酸脱水素酵素(IDH)は,イソクエン酸をα-ケトグルタル酸(α-KG)へ変換する酸化還元酵素で,IDH1/2変異が神経膠腫(グリオーマ)・急性骨髄性白血病・肝内胆管がん・軟骨肉腫などで報告されている。IDH変異細胞は,新たな機能として,α-KGから2-ヒドロキシグルタル酸(2-HG)を新たに産生する。高濃度2-HGは,TET2・KDM・EGLN・C-P4H Ⅰ~Ⅲ・Plod 1~3などのα-KG依存性ジオキシゲナーゼを阻害し,細胞内のDNAメチル化の亢進などのエピジェネティックな変化が起き,腫瘍の増殖・分化が促される。IDH阻害薬は,IDH変異をもつがん細胞に特異的に作用するものの,正常細胞やIDH野生型がん細胞には作用しないと考えられる。現在,国内外でAG-120・DS-1001b・BAY 1436032などのさまざまなIDH1阻害薬が開発され,第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験が進行中である。IDH1阻害薬は,変異型IDH1に対して特異的に働き,がんの増殖を抑制することが期待される。
「KEY WORDS」IDH,神経膠腫,膠芽腫,急性骨髄性白血病(AML),胆管がん,軟骨肉腫

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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