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Cancer biology and new seeds

CD47/SIRPαシグナルを標的としたがん免疫療法

齊藤泰之村田陽二的崎尚

がん分子標的治療 Vol.15 No.4, 62-67, 2017

がん細胞は腫瘍周囲に存在する免疫細胞との相互作用を介して免疫監視機構から逃れると考えられており,免疫応答の制御ががんの新しい治療戦略として注目されている。T細胞やNK細胞に加え,近年自然免疫細胞であるマクロファージや樹状細胞の重要性が注目されている。なかでもマクロファージや樹状細胞に高発現するSIRPαは,標的細胞に発現するCD47と結合することで(CD47/SIRPαシグナル),標的細胞の貪食を阻害することから,自然免疫系のチェックポイントとして認識されつつある。近年,さまざまながんでCD47の高発現が報告され,CD47/SIRPαシグナルを標的とした新たな分子標的治療の有効性が動物モデルにより実証されてきた。また,これらの薬剤は既存の分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の効果を増強させることが見出された。さらに,CD47を標的とした薬剤に関しては造血器腫瘍や固形腫瘍に対する臨床試験がすでに開始されている。一方で,一部のがんではSIRPαが高発現しており,抗SIRPα抗体などSIRPαを標的とした薬剤による抗腫瘍効果も見出されつつある。以上により,CD47/SIRPαシグナルを標的とした薬剤は,今後自然免疫系のチェックポイントを阻害する新たながん分子標的薬として実用化が期待される。
「KEY WORDS」マクロファージ,樹状細胞,抗体依存性細胞貪食,CD47,SIRPα,免疫チェックポイント

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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