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PALOMA-2試験:ホルモン受容体陽性進行乳がんに対するCDK4/6阻害薬の位置づけ

山下奈真井上有香徳永えり子

がん分子標的治療 Vol.15 No.3, 101-105, 2017

ホルモン受容体陽性乳がんは全乳がんのおよそ60~65%を占め,乳がん治療におけるホルモン療法は古くから確立された標的治療であるといえる。50年以上にわたり,ホルモン受容体陽性乳がんにおける治療の主軸はエストロゲンシグナル経路の阻害に置かれてきた。ただし,ホルモン療法耐性が初期から,もしくは治療に伴い生じることも事実である1)。近年,ホルモン療法耐性の克服の手がかりとしてサイクリン依存性キナーゼ(cyclin-dependent kinase;CDK)4/6阻害薬(palbociclib,ribociclib,abemaciclib)が注目されている。CDKsはセリン/スレオニンキナーゼファミリーとして知られ,細胞周期の制御因子である。図1に示すように,CDK4/6はサイクリンDと共同してretinoblastoma(RB)の過剰なリン酸化を促し,最終的にはG1-S期移行をきたし細胞周期が回ってしまう状況となる2)。このサイクリンD-CDK4/6-RB経路の異常がRB1によって制御されていた細胞周期の箍を外し,ホルモン療法耐性を獲得すると考えられている。サイクリンD-CDK4/6-RB経路の異常はサイクリンDの遺伝子増幅,Rb遺伝子の欠失もしくは変異,同経路の抑制因子であるp16遺伝子の欠失によって起こる3)。PalbociclibはCDK4/6を阻害する経口小分子化合物として開発された4)。第Ⅱ相臨床試験のPALOMA-1/TRIO-18試験において,閉経後エストロゲン受容体(ER)陽性ヒト上皮成長因子受容体(HER)2陰性進行乳がんに対する1次治療として,palbociclibとレトロゾールの併用はレトロゾール単剤に比べ無増悪生存期間(PFS)を延長することが証明された5)。本稿では,『The New England Journal of Medicine』誌に報告された第Ⅲ相臨床試験のPALOMA-2試験について概説する6)

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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