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Round Table Meeting

新世代の分子標的治療

赤司浩一小松則夫土井俊彦伊豆津宏二

がん分子標的治療 Vol.15 No.3, 58-65, 2017

分子標的治療の開発は疾患の分子病態をもとに,がん特異的な分子を標的に定めて行われる。標的はさまざまで,シグナル伝達分子や増殖因子,抗原などがある。
チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)において,最初の成功例はイマチニブであり,慢性骨髄性白血病(CML)患者の生存率は目覚ましく向上した。第3世代TKIのポナチニブ,ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬も造血器系腫瘍に対し臨床応用されている。消化器系では,消化管間質腫瘍(GIST)に対してイマチニブの有効性が高い。一方,大腸がんなどではマルチキナーゼ阻害薬が開発されている。
抗原を標的とした抗体製剤として歴史が古く,最も多く使われている薬剤は抗CD20抗体のリツキシマブであり,B細胞性リンパ腫に対し化学療法との併用で生存期間を延長した。こうしたnaked抗体のほか,近年は抗体-薬物複合体(ADC)製剤,キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法やBiTE療法にも期待がもたれる。消化器がんでは抗血管内皮増殖因子(VEGF)抗体や抗VEGF受容体(VEGFR)抗体など,抗体製剤の利用が多い。ヒト上皮成長因子受容体(HER)2陽性胃がんに対しては新規のADC製剤が注目される。
ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害薬やEZH2阻害薬などエピジェネティック作動薬の開発も進む。
がんの根治にはがん幹細胞の根絶が必要であり,Wnt/β-カテニン系はさまざまながん腫に共通の標的として期待されているところである。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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