外科手術は生体に侵襲を加える治療法である。侵襲によりさまざまなサイトカインが産生され,侵襲が過大になると抗原提示機能の低下やCD8+T細胞の増加など,免疫能にも大きな影響を及ぼす。周術期の輸血や感染性合併症は予後不良因子として知られている。過大侵襲を伴う術式で生存転帰の改善は得られず,周術期の免疫能低下(免疫抑制)は再発に密接に関連していることが示唆されている。周術期の免疫を調整する目的で,非特異的免疫賦活剤や養子免疫療法(AIT),腫瘍抗原ワクチンを用いた術後補助療法の研究が行われたが,有効性は示唆されるものの標準治療となるまでには至っていない。免疫チェックポイント阻害薬による補助療法は,周術期の免疫抑制を克服できる治療法として大きな期待が寄せられているが,安全性には十分な配慮が必要である。
「KEY WORDS」手術侵襲,免疫抑制,術後免疫療法,術前免疫療法,免疫チェックポイント阻害薬