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Theme Precision Medicine

Imprecision medicine から precision medicine へ

南博信

がん分子標的治療 Vol.15 No.1, 6-10, 2017

腫瘍ゲノムの解析が進み,遺伝子の変化に応じた分子標的薬が一部の腫瘍で著効を示し,遺伝子情報に基づいた個別化治療が行われている。今までは1つの遺伝子変化に対し1つの薬剤が開発されてきたが,技術が進歩し多くの遺伝子の変化が同時に解析できるようになり,複数の薬剤が選択肢となりうるようになった。遺伝子変化で腫瘍を再分類しそれぞれに対応する薬剤で治療する個別化治療が現実のものとなりつつあり,precision medicineとして注目されている。しかし,多くの薬剤はいまだ開発段階であり,腫瘍ゲノムを解析するクリニカルシーケンスもいまだ研究段階である。これらも臨床的有用性を示してはじめて実地臨床に導入されるのであり,precision medicineといえどもevidence-based medicineでなければならない。腫瘍ゲノムは腫瘍内・腫瘍間で差異があり,また常に変化する。これらをモニターするには末梢循環血中の腫瘍DNA(ctDNA)などを利用するliquid biopsyが期待される。Precision medicineは腫瘍ゲノムだけでなく,生活スタイル,環境要因の個人差にも基づいた個別化治療を目指す。膨大な情報を収集する技術・体制の確立が必要である。
「KEY WORDS」クリニカルシーケンス,アンブレラ試験,バスケット試験,薬理ゲノム学,liquid biopsy,血中循環腫瘍DNA

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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