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Theme 新しいチロシンキナーゼ阻害薬

多標的チロシンキナーゼ阻害薬

高橋俊二

がん分子標的治療 Vol.14 No.3, 33-39, 2016

分子標的薬のうち,小分子のチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の多くは複数のキナーゼを阻害し,multi-TKIと呼ばれる。血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)の阻害薬として開発されたイマチニブが現在c-abl,c-kit抑制効果により慢性骨髄性白血病,消化管間質腫瘍に用いられるのをはじめとして,さまざまながん腫に対して種々のmulti-TKIが用いられている。レンバチニブは血管内皮増殖因子受容体(VEGFR),PDGFRに加えて線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)を阻害することにより著明な血管新生阻害効果をもち,甲状腺がん,腎細胞がん(RCC)で効果が認められた。バンデタニブはVEGFR,RET,上皮成長因子受容体(EGFR)を阻害し,甲状腺髄様がんへの有効性が認められている。またcabozantinibはVEGFR,RET,c-metを阻害し,甲状腺髄様がん,RCCに対する有効性が確認された。一般に血管新生阻害薬としてはmulti-TKI,ドライバー変異の標的薬としてはsingle-TKIの有効性が高いが,薬剤の特性や腫瘍の生物学的変異により異なると考えられる。
「KEY WORDS」multi-TKI,血管新生,ドライバー変異,VEGFR,c-met

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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