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Theme 新しいチロシンキナーゼ阻害薬

特集にあたって

南博信

がん分子標的治療 Vol.14 No.3, 1, 2016

現在は多くの分子標的薬が臨床で使用されているが,そのなかでもチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)は数が多い。慢性骨髄性白血病のdriver oncogeneであるbcr-ablを阻害するイマチニブが劇的な効果を示し,慢性骨髄性白血病の治療体系を完全に変えた。引き続き上皮成長因子受容体(EGFR)のTKIであるゲフィチニブが非小細胞肺がん(NSCLC)に対して開発され,第Ⅱ相臨床試験で一定の奏効率を示したものの,第Ⅲ相臨床試験では従来の化学療法への上乗せを検討した比較でも,既治療例に対するbest supportive careとの比較でも有効性を示せなかった。その後,EGFRの遺伝子に特定の変異があるとゲフィチニブが著効することが示され,EGFR変異陽性のNSCLCに限った数々の第Ⅲ相臨床試験でゲフィチニブの有効性が確立した。その後も肺がんでは多くのdriver oncogeneが同定され,ALK融合遺伝子に対するクリゾチニブ,アレクチニブ,セリチニブが臨床で使用されている。これらの事実は,各がんにおいてdriver oncogeneを同定し,その阻害薬を開発することが効率的な薬剤開発につながることを示している。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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