Theme 分子標的薬を用いた周術期治療
(座談会)周術期治療における分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬の役割
がん分子標的治療 Vol.14 No.2, 46-52, 2016
各種がん領域において,分子標的薬によって進行がんの治療成績は向上し,さらに免疫チェックポイント阻害薬の登場で,一部のがんでは生存延長も期待できるようになっている。進行がんでの有効性をもとに,これらの薬剤を用いた周術期治療が検討されている。周術期治療が最も開発されているのは乳がん領域である。ヒト上皮成長因子受容体(HER)2陽性乳がんに対し,トラスツズマブを中心とした周術期治療が実施され,ペルツズマブやトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)による術後補助療法の試験も行われている。トリプルネガティブ乳がん(TNBC)では免疫チェックポイント阻害薬の開発も進められている。消化器がん領域では,導入されている分子標的薬は限られており,周術期治療の開発も滞っているが,HER2陽性胃がんの術前補助療法としてトラスツズマブ併用化学療法の試験が進行している。肺がん領域でも分子標的薬による周術期治療は有望な結果が得られていないが,第3世代の上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)を用いた術後補助療法の試験が進行中である。また,抗PD-1抗体による術後補助療法の試験も行われている。消化管間質腫瘍(GIST)ではイマチニブによる術後補助療法の有用性が確立しているが,GIST以外の肉腫では分子標的薬による周術期治療の有効性は明らかでない。一方腎細胞がん(RCC)では,分子標的薬の術前補助療法による腫瘍縮小により摘除率を高めることで予後が改善する可能性が示唆されている。抗PD-1抗体による術前・術後補助療法の試験も進められている。
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。