Theme 免疫療法の今後の発展と課題
免疫療法におけるバイオマーカーと個別化医療
Biomarkers and personalized medicine in cancer immunotherapy
がん分子標的治療 Vol.13 No.4, 20-23, 2015
「SUMMARY」昨今の研究により,免疫チェックポイント阻害薬の治療効果を期待できる患者を層別化する試みが進んでいる。腫瘍内のPD-L1の発現は,治療効果と正の相関が示されているが,陰性例でも奏効症例が少なからず存在するなど検討課題も多い。よって現時点では,PD-L1陰性であっても治療候補から除外するのではなく,治療の優先順位を決定する補助的指標として用いるべきと考えられる。次に,体細胞変異量が多いがん細胞は,正常細胞には存在しない新たな抗原(ネオ抗原)を発現し,これらの抗原に対し強い免疫応答を惹起するため,免疫チェックポイント阻害薬により排除されやすいことが明らかになってきている。さらに,腫瘍内T細胞に着眼したバイオマーカー探索も進行している。しかし,いずれも効果予測のための感度・特異度,臨床検査としての汎用性・迅速性,あるいは費用対効果の観点から一長一短である。したがって,臨床現場ではそれぞれのバイオマーカーの利点と限界をふまえた適切な判断が必要であるとともに,さらなる基礎研究・トランスレーショナルリサーチが求められる。
「KEY WORDS」PD-1,PD-L1,体細胞変異,ネオ抗原,免疫フェノタイピング
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。