Demoralizationとは,士気 (morale) の低下を意味する言葉で,1970年頃の米国において精神医学の術語となった.精神療法家Frank JDの定義1)によれば,ストレスの対処に失敗し続けた結果,無力感,孤立感,絶望感,自尊感情の低下,人生が無意味に思えてしまう感覚が生じた心理状態のことである.自分の力ではどうすることもできず,自己統御感を失って,絶望する.これは了解可能な反応であり,必ずしも病的な心理状態とはいえない.正常からひと連なりのディメンジョンにあると考えてよいが,demoralizationを症状としてDSM-5に基づいて記述すれば,大うつ病性障害や適応障害などの診断がつくことが多い.