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特集 アルコール依存症治療における断酒と飲酒量低減

5.減酒外来にみる飲酒量低減から断酒に至る事例

湯本洋介樋口進

Frontiers in Alcoholism Vol.10 No.1, 30-35, 2022

アルコール使用障害者への減酒の選択肢は,治療の入口へのハードルを下げることや検査値の改善,quality of life(QOL)の上昇などに寄与することがいわれている。その一方,断酒の維持が最も安全で最良の方向性であるということは各国ガイドラインに共通の事柄として記載されている。国立病院機構久里浜医療センターでは2017年より減酒外来を開設しており,当外来の受診者のうち,1割程度の者が外来経過中に断酒の方向性を選択する,あるいは初診の段階で断酒の維持を選択する者が存在した。外来経過中に断酒の方向性を選択し維持した者は社会機能が安定し,国際疾病分類第10版(2013年版)(ICD-10)のアルコール依存症の診断基準該当項目数が2~4つ程度のケースが主であり,外来診療を中心とした比較的強度の低い治療で断酒に結び付けられる層の可能性があった。治療ゴールの多様性を許容したセッティングでは,受診者自身が主体性をもって自らの治療ゴールを選ぶことが変化への動機付けに繋がることを期待している。
「KEY WORDS」減酒外来,Drinking risk level(DRL),治療ゴール,アカンプロサート,ナルメフェン

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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