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Clinical Report 症例紹介

精神科臨床における初診時の向こう側

―治療者の関心―

田中禎

Frontiers in Alcoholism Vol.6 No.2, 57-59, 2018

ここ数年,精神科臨床の現場ではさまざまな新薬の登場に呼応するかのように世間の関心が高まるなか,双極性障害や発達障害についての過剰診断の問題が取り沙汰されるようになった。一方,アルコール依存症に関しては,臨床現場において,まだまだ過小診断の傾向が否めない。専門家側からは「専門病院に入院してくる患者は重症や末期に属する方で,一般科で多くの軽症の患者が見過ごされている」との指摘もなされている。過剰診断と過小診断とを比べると,それぞれに問題はあるものの,広く関心をもった結果,過剰診断に陥ることと,関心が向かないことで過小診断に陥ってしまうことでは,後者の方により問題意識を感じてしまうのはアルコールの専門家の常かもしれない。なぜなら,一部のうつ病患者がその背景のアルコール問題が見過ごされたり軽視されたりすることにより,病態を複雑にし,予後を悪化させることは多い。また患者に限らず,その家族のアルコール問題が軽視され,見過ごされることにより,事態が不必要に複雑化,悪化しこじれてしまっているケースも後を絶たないからである。そのような状況をふまえて,初診の場面において,目の前の患者だけでなく,その周囲に治療者が関心を向け,必要に応じてさまざまな形で介入することは目の前の患者を援助する上でも大変有意義なことと考える。これらのことはアルコールの専門家にとって自明の理ではあるが,あらためてその重要性を感じた症例を経験したので,ここに報告する。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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