特集 アルコール・薬物使用障害の診断・治療ガイドライン2018
2.診断基準の観点から ―ICD-10とDSM-5の扱いについて―
Frontiers in Alcoholism Vol.6 No.2, 17-22, 2018
アルコール依存症候群(WHO,1977)で示された精神依存重視の立場はその後の米国精神医学会(DSM-Ⅲ,DSM-ⅢR,DSM-Ⅳ)および世界保健機構の診断基準(ICD-10)に引き継がれる。わが国ではアルコール依存症の診断・治療ギャップが認められ,実際のアルコール依存症者の十分の一以下の者にしか診断がつけられておらず,治療もされていない。DSM-5では「依存」,「乱用」の概念が統一されたアルコール使用障害診断基準が提示されたが,概念が依存よりも拡大していること,診断項目が11項目に増加し,診断に必要な診断数は2項目に減少していることから,診断閾値が大幅に低下している。こうした診断上の問題,変化に伴い治療目標も断酒だけではなく,飲酒量低減も含まれるようになっている。また,診断閾値の低下による症例の軽症化に伴い簡易介入が有効となっている。遷延するうつ病,不安障害の陰に軽症のアルコール使用障害があることが多く,見逃さないことが重要である。
「KEY WORDS」アルコール中毒,アルコール乱用,有害な飲酒,アルコール依存症,アルコール使用障害
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。