特集 アルコール依存症に合併する身体疾患とその治療
3.アルコールと膵炎
Frontiers in Alcoholism Vol.6 No.1, 25-31, 2018
アルコールは急性および慢性膵炎の主要な成因である。最新の膵炎全国疫学調査では,急性膵炎の成因の33.5%,慢性膵炎の69.6%がアルコール性であった。アルコール性膵炎では,男性に比べて女性が,より若年,より短い飲酒期間,より少ない累積飲酒量で発症するという性差がみられる。膵炎を発症するのは大酒家の一部にすぎない。このため,臨床的に膵炎が成立するためにはアルコールの作用のみならず,喫煙などの環境因子や遺伝的背景などが関与すると考えられる。1,959名のアルコール性膵炎患者を対象としたゲノムワイド解析などにより,膵消化酵素遺伝子などの多型がアルコール性膵炎と関連することが明らかとなった。すなわち,膵消化酵素遺伝子多型など膵臓にかかわる遺伝的背景を有する人が膵炎を発症するという考え方であり,なぜ大酒家の一部しか膵炎を発症しないのかという命題に一定の答えが得られようとしている。
「KEY WORDS」急性膵炎,慢性膵炎,遺伝子異常,飲酒,喫煙
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