2017年のわが国における女性の平均寿命は87.26歳であり,男性の81.09歳と比べて約6歳長い.また,日本の女性の平均寿命は世界第2位であり,女性の2人に1人が卒寿(90歳)の誕生日を迎えるまでに至った.幸い,日本人女性は,健康で若々しく自立して過ごせる歳月,健康寿命も74.79歳と世界のトップクラスに位置している.しかしながら,平均寿命と健康寿命の差は実に12.5年となっており,日本人女性は人生最期の10年間以上を不自由を抱え,不健康な状況下で日常生活を送っていることになる.誰しもが,介護や日々の生活のサポートを受けずに,自立した形で余生を過ごせる人生を望んでいるであろうことから,健康寿命の延伸は,福祉の向上や医療費の抑制という観点からも喫緊に取り組まなければならない課題だと言える.
また,現在わが国は未曾有の少子高齢化社会を迎えている.2018年10月時点で,日本の総人口は1億2,644万人で,人口の自然増減はマイナス42万4,000人.15歳未満の人口は全体の12.2%である一方,70歳以上は20.7%,65歳以上の高齢者は28.1%を占め,約3,560万人にのぼり,高齢者の半数以上が75歳以上で占められていることが明らかにされた.さらに,15〜49歳までの女性が産む子どもの数である合計特殊出生率は1.43と2.0を大きく下回っている.子どもを欲しいと考える夫婦らの希望がすべてかなった場合の出生率(希望出生率)は1.8と推定されていることから,出産や育児をサポートする医学的,社会的支援も不可欠であろう.
そこで本メインレビューでは,健康寿命の延伸と少子化対策をテーマに,「AGEsと女性医療」と題した企画を立ち上げた.女性の寿命やquality of lifeに深く関わる疾患を中心に,不妊症や不育症も取り上げ,ご専門の先生方に詳しく,かつ,わかりやすく解説していただいた.女性が罹りやすい病気,女性の健康寿命の損失に大きく関わる疾患に対して,日常診療の中でどう対処し,アドバイスしていったらよいのかについても各論の中で触れていただいている.分野は多岐にわたるものの,各先生には日々の臨床で頻繁に遭遇する症状や疾患を中心に扱っていただいており,明日からの日常診療に役立つ内容となっている.それぞれのテーマについての詳細は,各論をお読みいただくこととして,本稿では終末糖化産物(advanced glycation end products:AGEs)を標的とした女性医療を概観してみたい.