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THINK ABOUT WOMEN 女性について考える

「見た目」は美と若さのバロメーター

太田博明

WHITE Vol.7 No.1, 86-93, 2019

近年,顔貌ばかりでなく,姿勢や立ち居振る舞いなどの全身の「見た目」は健康状態を反映するトータルな指標として有用であることが医学的に認知されつつある.ニュージーランドのダニーデンで行われ,2015年に報告された米国の出生コホートによる研究調査1)によると,ダニーデン研究参加者の38歳時の正面写真を米国デューク大学医学部大学院生に情報を与えず,主観的健康度と見た目年齢を判定させた.その結果,主観的健康度は生物学的年齢と老化速度が大きいと低下し,見た目年齢は生物学的年齢と老化速度が大きいと上昇した(図1).この研究では老化年齢である生物学的年齢を米国国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey:NHANES)2)で使用されている身体状態を客観的に評価するための18種類のバイオマーカーを用いて推定した.このマーカーによる生物学的年齢の判定根拠は,このマーカーの上昇は年齢に伴う慢性疾患の罹患率と死亡率の上昇を反映しているからである.すなわち,心血管疾患,糖尿病,脳梗塞,呼吸器疾患,神経疾患の5疾患は加齢と共に罹患率と死亡率が上昇し,これら5疾患に関連する18のバイオマーカーも上昇することが確認されている.この研究では954名の26歳時,32歳時,そして今回の38歳時における6年ごとの18種類のバイオマーカーの平均的推移を調査した(図2).
加齢は男女ともに等しく訪れ,老化が早い人もいれば,遅い人もいるため,「見た目」には年齢差や個人差が生じる.個人の健康に裏付けされた顔貌や姿勢や立ち居振る舞いなどは,健康や老化のバロメータとして「見た目」に現れる.「見た目」の老化は遺伝的要因が約20%,遺伝以外の環境的要因が約80%ともいわれ,日々の生活習慣の積み重ねが反映されることから,個人の努力によって老化のスピードを緩やかにすることが可能となる.生物学的年齢と老化速度との関係をみると,相関係数は0.38と正相関を呈し,生物学的年齢は老化速度によって規定されることが判明している(図3).
以上のことを背景に本稿では,ヒトの「見た目」の医学的な裏付けと「見た目」の美と若さを維持するための方法を記載する.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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