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特集 周産期医療の進歩と今

Overview

関沢明彦

WHITE Vol.6 No.2, 5-8, 2018

わが国では出生数の減少傾向に歯止めがかからず,2016年に97.6万人,2017年に94.1万人と減少が続いている.また,今後もその傾向は持続し,2030年には74.9万人,2050年には55.7万人と半減することが予測されている.このような少子化とともに妊婦の高年齢化も速い速度で進行している.2000年に35歳以上で分娩した産婦は産婦全体の11.9%であったものの,2015年には28.1%と大幅に増加している.さらに現状では妊婦の30%以上が35歳以上の高年齢妊婦であると予想され,この増加傾向は今後も続くものと思われる.このように妊娠を考える女性の年齢が上昇することで起こるのが,不妊症の増加,流産率の増加,不育症の増加などである.また,高年齢妊婦が増加することで,児の染色体疾患罹患率や妊娠高血圧症候群などの妊娠合併症の罹患率,周産期死亡率,妊産婦死亡率などが増加することになる.このように,今後の周産期医療では分娩数は減少するもののさまざまな悩みを抱える妊婦,合併症や偶発症を発症するハイリスク妊婦が増加し,産婦人科医にとってはより専門的な知識やきめの細かな対応,管理が求められる.
このような産婦人科を取り巻く社会背景を踏まえ,周産期分野ではさまざまな進歩や改善に向けた取り組みが行われており,妊娠を希望する女性が無事に児を生み育むことを支援する体制の整備が確実に進んできている.本特集では,高年齢妊娠の増加で問題となることの多い出生前検査,妊娠高血圧症候群,不育症について専門家の先生方に現状をご解説いただいた.また,近年の周産期医療の安全性向上に向けた取り組みとして,産科医療補償制度や日本産婦人科医会の妊産婦死亡報告事業がある.産科医療補償制度では脳性麻痺を発症した事例において,児の養育における経済的な負担を補償するとともに,周産期の経過を専門家が解析し,事例の原因や医療行為上の問題点を抽出し,それを同種事例の再発防止に生かす取り組みである.2009年にこの制度が発足したが,実際の脳性麻痺児の出生数は2009年に比べ2010年が約10%減少し,翌年も約10%減少するなど,成果が確認できている1).この周産期医療の安全性向上に向けた取り組みについて,本制度の原因分析委員会の活動についてもご解説いただいた.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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