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女性のウェルエイジングとアンチエイジング

4 女性における脳梗塞の特徴

石束光司松尾龍吾郷哲朗

WHITE Vol.1 No.1, 23-27, 2013

はじめに
 超高齢化社会の到来とともに脳卒中患者,特に脳梗塞患者が増加の一途をたどっている.脳梗塞は寝たきり・介護の最大要因であり,その発症予防が喫緊の課題である.近年,性差医療の研究が広く行われるようになり,脳卒中やその3分の2を占める脳梗塞もまた,性差のある疾患であることが明らかとなっている.性差には,遺伝学やホルモンに基づく生物学的な差と,ライフスタイルや環境など社会学的な差があるが,女性の社会進出に伴い,ライフスタイルの差異は小さくなっていると思われる.一方で,高血圧症・糖尿病・脂質異常症など脳梗塞の危険因子そのものにも生物学的な性差があることから,性差に留意した生活習慣病・脳卒中診療は重要である.本稿では,われわれが行っている脳卒中データベース研究の知見を交えながら,「女性」における脳梗塞の病態やリスクの特徴について述べる.

脳梗塞発症頻度における性差

 一般に,他の心血管病同様,脳梗塞は男性に多く,女性に少ない.しかしながら,女性の脳梗塞患者は男性に比べ,高齢発症で,発症時の重症度が高く,予後不良となりやすいことが知られている(後述)1).1961年から1993年までの32年間,一般住民を追跡調査した当科・久山町研究によると,脳梗塞の発症率は,男性6.4(対1,000人/年)に対して女性3.4であり,女性が有意に低率であった.年齢階級別にみると脳梗塞発症の男女比は50歳代では2.1,60歳代では2.3,70歳代では1.5,80歳代では1.4であり,加齢に伴い性差が減少する傾向がある2).
 われわれは2007年6月より,発症7日以内の急性期脳卒中入院患者を前向きに登録する福岡脳卒中データベース研究(Fukuoka Stroke Registry:FSR)を継続して行っているが,FSRを用いた検討(脳梗塞患者5,605名登録時点)においても,男性59.6%,女性40.4%と男性の頻度が高く,女性は男性と比べて高齢者に多く発症していた(図1).

脳梗塞病型における性差

 ひとえに脳梗塞といってもその発生機序はさまざまであり,病態や梗塞部位・サイズにより,神経障害の程度や予後も大きく異なる(表1).

脳梗塞における三大病型は次の3つである.①頭蓋外~頭蓋内・脳表を走行する比較的太い動脈(=主幹動脈)の粥状硬化を原因として発症するアテローム血栓性脳梗塞,②脳表の主幹動脈から分枝し脳内部を走行する直径200ミクロン以下の細動脈(=穿通枝動脈)が細動脈硬化により閉塞するラクナ梗塞,③脳血管の動脈硬化とは無関係に,心腔内(とくに左心耳内)に形成された血栓が脳に飛散し脳血管を閉塞することによって生じる心原性脳塞栓症.最近では,これら三大病型以外(=分類不能と総称)にも,大動脈弓部のプラーク破綻に起因する大動脈原性脳塞栓症や頸動脈・椎骨動脈など脳主幹動脈の動脈解離による脳梗塞などが一定の頻度で生じていることが明らかとなっている.
 FSR研究において脳梗塞の男女別病型頻度をみると,心原性脳塞栓症が男性では20.8%であるのに対し,女性では27.9%と明らかに多い(図2).

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