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糖尿病診療最前線

福井県済生会病院内科

番度行弘

Diabetes Horizons ―Practice and Progress― Vol.3 No.2, 18-23, 2014

糖尿病専門医が少ないとされる福井県において,福井県済生会病院は糖尿病専門医5名,CDEJ 26名という充実した診療体制を築いている。同院初めての糖尿病専門医として赴任した番度行弘先生は,約20年にわたりチーム医療体制の構築,生活習慣病外来の創設,糖尿病連携パスの稼働など糖尿病診療の充実に精力を傾けてこられた。その過程で直面した多くの問題とその都度に講じてきた打開策について番度行弘先生にお話を伺った。

70年以上の歴史をもつ地域の中核病院

―まずは施設のご来歴をご紹介ください。
 当院は1941年に恩賜財団済生会福井診療所として開設されました。済生会創立の原点である「救療済生」の精神は当院にも受け継がれており,「患者さんの立場で考える」という基本理念の基,チーム医療の実践による質の高い医療・福祉の提供に努めています。1993年5月に現在地に新築移転したのを機に,医師会のかかりつけ医と当院担当医が共同で診療にあたる20床の開放型病床をいち早く設置し,積極的に地域医療連携を推進してきました。現在は22診療科,460床を有し,がん診療連携拠点病院,僻地医療拠点病院,災害拠点病院として県の中核病院の役割を担い,2004年3月には北陸地方初の「地域医療支援病院」に認定されました。
 糖尿病診療においては専門医5名とCDEJ 26名を擁し,糖尿病専門医が少ない県内の医療施設としては比較的恵まれた人材環境にあります。思えば,当院のチーム医療の始まりは糖尿病診療における取り組みが先駆けであったといえます。
 また,わが国では初めて代謝活性化療法(MAT)を実施し,主に1型糖尿病患者さんを中心に行っておりますが,大変良好な結果が得られ,患者さんのQOLの向上に繋がっていると実感しております。

糖尿病診療対策チームで数々の取り組みを実施

―先生が行われたチーム医療の体制づくりについてお聞かせください。
 1995年4月に当院で初めての糖尿病専門医として赴任しましたが,まず私は糖尿病診療対策チームの編成に取り組みました。医師,看護部,管理栄養士,薬剤師,臨床検査技師,理学療法士10数名で集まり,糖尿病教室の再編に着手しました。当時の糖尿病教室は週1回の開催で,管理栄養士と医師が週替わりに話をするというのんびりとしたものでした。現在は全11講義に充実させ,多職種で講義を受け持っています。臨床検査技師がメンバーとして入っているというのは当時としては画期的なことでした。現在の糖尿病教室は2週間で1クールの構成ですが,教育入院は1週間の場合もあるため1週目に基本的な講義を盛り込み,2週目はより踏み込んだ内容としています。また患者教育用の『わたしの糖尿病テキスト』を作成し,現在では第4版と改訂を重ねてきました。
 そのほか患者交流会が発展した形で発足した糖尿病患者会「済糖会」は,患者さん40名,スタッフ25名まで会員数が増え,総会やお食事会,会報の発行など様々な活動を行っています。そして1998年には糖尿病教育入院パスの運用を開始し,チーム医療を強化する取り組みを通じて,糖尿病診療の充実と患者サービスの向上を図ってきました。

患者さんのニーズを満たす病診連携を模索

―病診連携はどのように進めてこられたのですか。
 糖尿病をはじめとした生活習慣病の長期的な管理には病診連携が不可欠ですが,患者さんは病診連携に対して「治療方針の不一致」「医療レベルの格差」「中核病院からの切り捨てられ感」といった不満を抱いています。
 そこでわれわれは,患者さんのニーズを満たす病診連携を行うために,「治療方針の不一致」の打開策として「診療ガイドライン」を作成することにしました。2型糖尿病,脂質異常症,高血圧,高尿酸血症,肥満についてそれぞれの専門医が担当を受け持ち,2年ほどかけて書籍化しました。当時は病診間での共通の診療基盤として福井県内で広く活用されました。
 「医療レベルの格差」については,連携先のコメディカルスタッフを対象とした「生活習慣病セミナー」や連携医師を対象とした「生活習慣病連携懇話会」などの勉強会を開催し,知識の底上げを目指しました。生活習慣病セミナーは当初月1回開催し250名もの方に参加いただきました。糖尿病,高血圧,脂質異常症,アルコール,たばこ,脂肪肝,骨折,うつ病,歯周病,癌などを幅広く取り上げ,現在はこれまでに大体のテーマを網羅したこともあり3ヵ月に1回の開催としています。生活習慣病連携懇話会は現在,症例検討会として3ヵ月に1回開催しており,病と診それぞれ1例ずつ対応に難渋した症例を提示し,場合によっては管理栄養士や看護師にも参加してもらい討議しています。医師は検査結果などの数値にとらわれがちですので,コメディカルスタッフの意見は非常に参考になり議論が深まります。症例検討の後は私が最新トピックスについて20分程度の情報提供を行っています。
 また,「中核病院からの切り捨てられ感」へは,生活習慣病外来の創立と活用をその対策としました。

―生活習慣病外来はどのような役割を果たしているのでしょうか。
 生活習慣病外来は,院内の専門外来で病状の安定した生活習慣病患者さんを最寄りの医療機関に紹介し,本外来との「2人主治医体制」で診療にあたることを基本としています。患者さんごとに3ヵ月に1回,あるいは半年に1回程度,当外来を受診していただき,合併症の検査や栄養指導,運動指導,生活指導などチーム全体で質の高い患者指導を行います(図1)。

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