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糖尿病診療最前線

盛岡市立病院糖尿病・代謝内科

引地勲

Diabetes Horizons ―Practice and Progress― Vol.3 No.1, 22-26, 2014

わが国の糖尿病患者数は,生活習慣と社会の変化に伴い増加の一途を辿り,その合併症である心血管障害や腎症,網膜症,足壊疽なども大きな社会問題になっている。盛岡市立病院では引地 勲先生が赴任してきた25年前より,引地先生を中心として多職種が一丸となり,糖尿病とその合併症対策に真摯に対応してきた。現在は,院内外に「糖尿病なら盛岡市立病院糖尿病・代謝内科」と広く認知され,血糖コントロールのみならず,クリニカルパスを用いた教育入院にも力を入れている。そこで,これまでの経緯と現状,今後の展望について,引地先生にお話を伺った。

県内唯一の糖尿病・代謝内科標榜施設

―施設のご来歴と概要をご紹介ください。
 私が盛岡市立病院に赴任してきた約25年前の1988年頃,内科には,糖尿病網膜症で既に失明していたり,足壊疽で切断せざるをえなかったり,すぐさま人工透析を開始しなければならないほど腎症が進んでいたりという糖尿病患者さんが多く来院されていました。そのため,糖尿病を専門に診る必要があるということで,私の赴任をきっかけに糖尿病外来を開設しました。
 当初,糖尿病外来は,週1回(水曜日)のペースで,患者さん20名ほどをフォローアップしていたのですが,徐々に患者数が増えてきていたため,週2回(水・木曜日)のペースで行うようになりました。この頃に,「みずき(水・木曜日と,冬に赤い実を付ける縁起の良いみずきの木の2つをかけています)の会」という患者会を組織しました。その後も,患者数は増加の一途を辿り,1日の外来受診患者数が70名を超えるようになった頃に,毎日,糖尿病外来を実施するようになりました。2003年に院内標榜として内科・糖尿病代謝科を掲げ,2006年に糖尿病専門医を1名増員し,2010年に対外的に認められた糖尿病・代謝内科を標榜しました。現在,県内唯一の2名の糖尿病専門医がいる,糖尿病・代謝内科として,地域から多くの糖尿病患者さんを受け入れ,その治療に力を注いでいます。

すぐさま入院加療を必要とするケースも

―糖尿病診療の現状と特色について教えて下さい。
 私は2013年8月に退職し,郷里(一関)に戻り,一関中央クリニックにて糖尿病専門医として地域医療に従事しております。現在(2013年12月),盛岡市立病院糖尿病・代謝内科は,歳弘真貴子 医師(現 糖尿病代謝内科 科長),常勤医 1名(岩手医科大学等糖尿病代謝内科 大学院生),また週3回の糖尿病専門医の応援(岩手医科大学糖尿病代謝内科),および3名の看護師が1日50~70名の糖尿病患者さんの診療にあたっています。年間フォローアップ者の人数や特徴はおおむね3ヵ月間の患者動向を調べればわかると考え,2013年5~7月までの3ヵ月間を調査しました。その結果,当科を1,331名の糖尿病患者さんが受診しており,うち66名が1型糖尿病,70名が境界型糖尿病,残りが2型糖尿病で,インスリン導入率が35%でした。患者さんは思ったほど高齢化しておらず,平均年齢は全国平均とほぼ同じ63~64歳で,平均HbA1c(NGSP)は7~7.5%でした。
 実は当科には,私が赴任してきた当初に比べれば少なくなったとはいえ,今なお,初診時からすぐにでも入院加療が必要な重症の糖尿病患者さんが受診されることが少なくありません。例えば,数年前から健診で糖尿病だと指摘されているにもかかわらず放置し,ようやく当科に「健診でひっかかった」と来られた時には,HbA1c(NGSP)は10%を超え,既に口渇などの症状もみられているというケースがしばしばみられます。残念ながら,初めて病院を受診したときに既に糖尿病合併症が認められているという患者さんも少なからずおられます。また,当院には精神科があることから,アルコール依存症や統合失調症,うつ病などの精神疾患に,重症の糖尿病を合併している患者さんもおられます。重症の糖尿病患者さんが全体の7~8割を占めている状況で,インスリンを導入しても血糖コントロールが難しいこともあり,全体的にみると甘めの血糖コントロールになっています。
 このように現状としては,まだまだ至らぬところはあります。しかし,私が赴任して以来,院内においては,糖尿病専門医,日本/地域糖尿病療養指導士(CDEJ/ L-CDE)である者を含めた看護師,管理栄養士,薬剤師,理学療法士,および外科をはじめとした他診療科医師などによる患者さんを中心としたチーム医療を実践するとともに,院外では,糖尿病を専門としていない地域医療スタッフ(医師,看護師,薬剤師など)や一般市民の方々に対して糖尿病の啓発活動を展開してきました。そうしたことにより,院内外からの当科への信頼度が高まり,糖尿病を巡る状況はかなり改善してきたと自負しています。実際,院内では,他診療科入院患者さんであっても糖尿病を合併している場合は,ほぼ全例,主治医,あるいは病棟看護師から糖尿病に関するコンサルトが当科に依頼されるようになっています。また,地域からは,糖尿病非専門医のみならず,糖尿病専門医からも多くの患者さんが教育入院を含め紹介されてくるようになっており,早期軽症の糖尿病患者さんも増えつつあります。

院内横断的なチーム医療を実践

―チーム医療の具体的な活動を教えてください。
 内科病棟は30床ありますが,入院患者さんはほぼ全例,糖尿病で,糖尿病病棟といっても過言ではありません。病棟では,週1回,糖尿病専門医,看護師,管理栄養士,薬剤師,理学療法士などによる医療チームで総合回診を実施しています(写真1)。

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