Basic & Clinical Topics
[基礎①]メトホルミンは酸化還元に依存したメカニズムにより糖新生を阻害する
DIABETES UPDATE Vol.8 No.2, 14-16, 2019
メトホルミンは世界で最も広く使用されている2型糖尿病治療薬の1つであり,主に肝臓での糖新生を阻害することにより耐糖能を改善する。その分子メカニズムはいまだ不明な点が多いが,ミトコンドリアの呼吸鎖複合体であるcomplexⅠの阻害作用が広く知られている1)-3)。その結果,細胞内AMP/ATP比は上昇し,AMP活性化キナーゼ(AMPK)の活性化などを介して糖新生に関与する遺伝子発現を抑制するとされる。
しかし,complexⅠの阻害作用はヒトにおけるメトホルミン内服後の血中濃度(薬理濃度)よりも高い濃度で観察される現象であること,またAMPKのノックアウトマウスでもメトホルミンの作用を認めることなどから,complexⅠやAMPKを介さないメカニズムの存在も示唆されてきた。
著者らはこれまで,メトホルミンがグリセロリン酸シャトルに関与するglycerol-3-phosphate dehydrogenase 2(GPD2)の活性を阻害することで糖新生を抑制し,GPD2ノックアウト動物ではメトホルミンの効果が減弱すると報告している3)。GPD2は細胞質およびミトコンドリアの酸化還元状態に影響を与えるタンパク質であることから,今回紹介する文献で著者らは,安定同位体のトレーサーを用いた動物実験により,メトホルミンは細胞内の酸化還元状態の変化を介して糖新生を抑制する可能性を検証している。
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。