本邦では,高齢者および2型糖尿病患者の両者が増加傾向であり,当然のことながら高齢の2型糖尿病患者も増加の一途を辿っている。糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)の基礎集計資料によると,2型糖尿病登録患者の平均年齢は年々上昇し,2013年度には65.14歳となり初めて65歳を超えた1)。高齢者は心身機能や認知機能の個人差が著しいために,血糖コントロール目標は患者のADLや併発疾患,重症低血糖のリスク,余命などを考慮して個別に設定することが,2016年5月に日本糖尿病学会と日本老年医学会による合同委員会から公表された。しかしながら,高齢者糖尿病患者においても,合併症予防のためにはあくまでもHbA1cを7.0%未満に目標とすることに変わりはなく,さらに薬物療法の副作用なく達成可能な場合は,6.0%未満を目標とすることとしている2)。したがって,高齢者糖尿病患者においても安全かつ可能な限り厳格に血糖を正常化させる必要がある。
2014年に上市されたsodium glucose cotransporter 2(SGLT2)阻害薬は,これまでの経口血糖降下薬やインスリン,glucagon-like peptide 1(GLP-1)受容体作動薬とは異なる新しい機序の2型糖尿病薬であるが,治験の際には低血糖などの糖尿病治療薬に共通する副作用に加えて,感染症・脱水などの体液量減少や皮膚疾患といった本剤に特徴的な副作用を認めた。しかしながら,高齢者における有効性および安全性についてのデータは乏しく,発売から3ヵ月以内に65歳以上の患者に投与する場合には,全例登録することが公表された3)。これらの高齢者特定使用成績調査の結果から,有害事象や副作用の内容および頻度は,治験データと大きく変わりがないことが示され,高齢者への投与に関しては,SGLT2阻害薬の発売当初に発表されたRecommendationにおいて「慎重に適応を考えた上で開始する」とされていたが,2016年5月には「75歳以上の高齢者あるいは65歳から74歳で老年症候群(サルコペニア,認知機能低下,ADL低下など)のある場合には慎重に投与する」4)という改定が加わり,より効果的な高齢者への使用方法が示されつつある。本稿では,STELLA-ELDERの結果を中心に,高齢者におけるSGLT2阻害薬使用の位置づけについて概説する。
2014年に上市されたsodium glucose cotransporter 2(SGLT2)阻害薬は,これまでの経口血糖降下薬やインスリン,glucagon-like peptide 1(GLP-1)受容体作動薬とは異なる新しい機序の2型糖尿病薬であるが,治験の際には低血糖などの糖尿病治療薬に共通する副作用に加えて,感染症・脱水などの体液量減少や皮膚疾患といった本剤に特徴的な副作用を認めた。しかしながら,高齢者における有効性および安全性についてのデータは乏しく,発売から3ヵ月以内に65歳以上の患者に投与する場合には,全例登録することが公表された3)。これらの高齢者特定使用成績調査の結果から,有害事象や副作用の内容および頻度は,治験データと大きく変わりがないことが示され,高齢者への投与に関しては,SGLT2阻害薬の発売当初に発表されたRecommendationにおいて「慎重に適応を考えた上で開始する」とされていたが,2016年5月には「75歳以上の高齢者あるいは65歳から74歳で老年症候群(サルコペニア,認知機能低下,ADL低下など)のある場合には慎重に投与する」4)という改定が加わり,より効果的な高齢者への使用方法が示されつつある。本稿では,STELLA-ELDERの結果を中心に,高齢者におけるSGLT2阻害薬使用の位置づけについて概説する。