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Basic & Clinical Topics

[基礎①]長期間のGABA投与によって膵α細胞からβ細胞様細胞新生が生じる

氷室美和綿田裕孝

DIABETES UPDATE Vol.7 No.1, 16-17, 2018

糖尿病の主要な病因は膵β細胞障害によるインスリン分泌不全である。失われたβ細胞を補充するために,幹細胞や内分泌前駆細胞からβ細胞の分化・増殖を促進する,あるいは全く異なる細胞からβ細胞を誘導できるような方法を見出すことができれば,糖尿病の新たな治療戦略となりうる。
膵内分泌細胞の発生過程には,特徴的な転写因子群が関与していることが知られている。まず膵臓前駆細胞にNgn3が発現すると内分泌前駆細胞となり,その後,Pax4の発現によってβ細胞に,Arxの発現によってα細胞に分化していく。この2つの転写因子Pax4とArxは拮抗的に働いており,互いの発現を制御している。これまで,マウスのα細胞でArxの発現を低下させたり,Pax4を強制的に発現させることによって,α細胞がβ細胞様細胞へと変化する「α to β」の細胞分化転換が生じることが報告されていた。しかし,これらは遺伝子改変マウスを用いた検討結果であり,この方法をどのように臨床応用するかは大きな課題であった。そこで,本論文において著者らは,マウスα細胞にPax4を強制発現させてβ細胞へ分化誘導した細胞を単離し,トランスクリプトーム解析を行った結果,神経伝達物質として知られるGABA(γ-アミノ酪酸)シグナル関連遺伝子の発現が増加していることを見出した。さらに,その後の検討でGABAがα細胞からβ細胞新生を誘導する因子であることを報告し,今後の新たな糖尿病治療への可能性を示した。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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