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開業医院施設インタビュー

夕陽ヶ丘 佐藤クリニック

佐藤利彦

DIABETES UPDATE Vol.2 No.2, 48-51, 2013

 大阪市天王寺区という都心でありながら,寺社仏閣や歴史ある名所・旧跡が点在する夕陽ヶ丘という地域に位置する佐藤クリニック。院長の佐藤利彦先生は,糖尿病専門医として市民病院を中心に約30年の臨床経験を重ね,2010年にご自身の出身地としてもなじみの深いこの地で開業された。寺院と学校に囲まれ住宅地の少ない地域での開業ながらも,着実に患者数を増やしてこられ,治療中断率がきわめて低いという佐藤先生に糖尿病の診療方針や患者さんとの信頼関係の築き方などについてお話を伺った。

師の教えを守り患者さんの全身を診る診療を実践

―先生は30年の勤務医生活を経て開業されましたが,開業までの経緯を教えてください。
 私は1979年に大阪市立大学医学部を卒業し,同大学の第二内科に入局して和田正久教授(当時)に師事しました。和田先生からは「糖尿病は頭のてっぺんから足のつま先まで全身を診なければならない」という教えを受け,以後30年,「病気ではなく患者さんを診る」ことをモットーに,大阪市の市民病院を主として糖尿病の診療にあたってきました。しかし,大病院は入院なども短期化の流れにあり,患者さんとじっくり関わることが難しくなってきました。勤務医時代は毎週200人以上の患者さんを次々と診ていましたが,多数の患者さんのある一時期を診るという診療ではなく,少数であってもその患者さんを継続的に,生活を,さらには人生を診ていきたいという思いから開業しました。

―和田先生の教えが現在,佐藤先生が実践していらっしゃる糖尿病診療の礎となっておられるのですね。
 はい。とてもよい教えを受けたと思っています。和田先生には,糖尿病の診療に専門性をもつことに加えて,もう一つ得意分野をもつようにとも教えられ,実際,私の周りには皮膚科や眼科,神経内科を得意とする尊敬すべき先輩もいました。当院でも合併症の検査はできる限り院内で対応できる体制を整えています。患者さんの体に起きることはすべて引き受けるという気持ちで診療にあたっています。
 また,専門医に紹介する際にも,たとえば「皮膚の合併症がみられた場合は皮膚科を紹介」というのではなく,「皮膚のこの疾患に対してはこの先生を紹介」というように患者さんの病状に合わせて紹介するように教えられました。研修医時代には,患者さんを連れて皮膚科や整形外科に一緒に行き,実際に先生のお話を直接聞いたものです。これらの教えは現在も活かされています。

患者さんを否定しない診療が基本

―来院されるのは糖尿病の患者さんが中心なのでしょうか。
 全体の8割程度,約500人が糖尿病患者です。最近では天王寺区内の方も増えてきましたが,紹介により遠方から通われている方も多数おられます。当院が位置する地域は学校と寺院が周辺の4分の3を占める住宅地の少ない地域ですが,患者さんは年々増加傾向にあり,現在は1型糖尿病患者が約60人,2型糖尿病患者が約440人の割合です。年齢層でいえば10代~90代までと幅広く,妊娠中や出産直後の方,インスリンポンプ療法(CSII)の方など,どのような患者さんも受け入れているというのが特徴かもしれません。

―糖尿病診療で先生が心がけておられることを教えてください。
 患者さんの“あるがまま”をできるだけ生かした治療をすることです。生活習慣病の診療では「生活習慣を変えましょう」とよく言われると思いますが,私はその人が今まで生きてきた生活習慣の原型を生かしながら修正していくように心がけています。
 日本の医療は「してはいけません」という禁止の医療であり,西洋の医療は「ここまではしてもいい」という許可の医療であるといわれます。同じことを伝えていても,患者さんの抱く印象は大きく違います。日本には昔から医師が指示をして患者さんはそれに従うという風潮があり,医療者側も「どうせ守らないだろう」と必要以上に厳しい制限を患者さんに課すようなところがあると思います。患者さんは“あるがまま”で生活してきたことで糖尿病になってしまったわけですが,私はその方の人生を否定することなく,可能な限りできることを探してあげたいという気持ちで診療しています。
 ただ,実際に患者さんの生活を生かした治療をするためには,患者さんの話を丁寧に聞き,しっかりコミュニケーションがとれていなければなりません。特に初診ではお話を聞くことを重視し,十分に時間をかけています。お話は病気に関することだけではなく,社会的な背景や生活環境,生活パターンなども会話のなかで自然に聞き出していくようにしています。

薬物療法を早期に導入し血糖値を是正できる投与方法を模索する

―糖尿病の治療方針についてお聞かせください。
 私は受診された方には早期から薬物療法を取り入れてでも,できるだけ早く血糖値を是正することを基本としています。ご本人が薬物療法に抵抗感がある場合は考慮しますが,自らクリニックを受診される方は積極的な治療を想定して来られていますので薬物療法の受け入れは比較的スムーズです。使用可能ないくつかの薬剤を説明しながら,患者さんに合わせて最適と思われる薬剤を提示します。
 栄養指導は糖尿病療養指導士(CDE)である管理栄養士に月に3回来てもらい,患者さんが疑問を抱かれたときなどに導入しています(写真1)。

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