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座談会(Round Table Discussion)

DPP-4阻害薬の特徴と注意点

稲垣暢也谷澤幸生寺内康夫矢部大介

DIABETES UPDATE Vol.2 No.2, 4-18, 2013

 わが国で2型糖尿病の治療にジペプチジルペプチダーゼ(DPP)-4阻害薬が臨床応用されてから,3年が過ぎました。現在,シタグリプチンに加え,ビルダグリプチン,アログリプチン,リナグリプチン,テネリグリプチン,アナグリプチンの6剤が上市され,既に推定250万人を超える2型糖尿病患者さんがDPP-4阻害薬を服用しています。実地臨床の現場で,DPP-4阻害薬の優れた臨床効果が高い評価を受ける一方で,選択肢が広がる中,個々の患者さんに最適のDPP-4阻害薬をどのように選択すべきか,使いこなしていけば良いのか,判断に迷う場面も少なくありません。
 そこで,本座談会では,糖尿病領域をリードするエキスパートの先生方に,DPP-4阻害薬の特徴と注意点について具体的なアドバイスをいただきました。

司 会
稲垣暢也 Nobuya Inagaki
京都大学大学院医学研究科糖尿病・栄養内科学教授

出席者(五十音順)
谷澤幸生 Yukio Tanizawa
山口大学大学院医学系研究科病態制御内科学教授

寺内康夫 Yasuo Terauchi
横浜市立大学大学院医学研究科分子内分泌・糖尿病内科学教室教授

矢部大介 Daisuke Yabe
関西電力病院疾患栄養治療部部長

稲垣(司会) わが国初のDPP-4阻害薬としてシタグリプチンが臨床の現場に登場してから3年が過ぎ,現在既に6剤のDPP-4阻害薬が上市されています。実地医家の先生方から臨床効果が非常に良く,手応えを感じているという声をお聞きしますが,それを裏付けるように250万人を超えるわが国の2型糖尿病患者さんがDPP-4阻害薬を使用されていると推定されます。このようにDPP-4阻害薬が臨床現場で汎用されていますが,6剤の選択肢があるなかで,どう使い分けていったらいいのか,どのように使いこなせば良いのか,臨床現場で判断に迷われる先生方もいらっしゃると思います。そこで,本日は「DPP-4阻害薬の特徴と注意点」に焦点を当て,お話を伺いたいと思います。

糖尿病治療におけるDPP-4阻害薬の位置付け
―日本人における有用性―

稲垣 最初に,糖尿病治療におけるDPP-4阻害薬の併用薬としての位置付け,使用の現状について,寺内先生から,先生方が実施されたCOMPASS studyも含めてご説明いただきたいと思います。

1.日本人で高いDPP-4阻害薬の効果
寺内 日本でDPP-4阻害薬が使われ始めた当初は,他剤との併用が多かったと思いますが,徐々に第一選択薬として使われる機会も出てきましたし,糖尿病専門医のみならず非専門医の先生方にも広く使用されるようになり,汎用されるようになってきた現状があります。その背景には,やはり日本人2型糖尿病患者でシンプルに使えて有効性も高く,しかも安全性の点でも比較的大きな問題点はないことが挙げられると思います。
 日本人でDPP-4阻害薬が本当に有効かどうかを考える時に1つ参考になるのが,ParkらによるDPP-4阻害薬とプラセボまたは経口糖尿病薬との無作為化比較試験(RCT)62報のメタ解析の成績です。それによると,日本人では,プラセボのみならず,他の経口糖尿病薬と比較してもDPP-4阻害薬の効果が高く,日本人でより有効性が期待できる結果になっています。それが,DPP-4阻害薬の使用が日本で急速に広がった理由の1つであると考えられます。
 私たちは,現在日本で最も汎用されるスルホニル尿素(SU)薬単独またはビグアナイドの併用で十分な効果が得られない時に,次の一手としてDPP-4阻害薬(シタグリプチン)とチアゾリジン薬(ピオグリタゾン)のどちらが有用であるかを比較するRCTのCOMPASS studyを実施したところ,メタ解析の結果を実際に反映する成績を得たので,紹介したいと思います。
 2012年4月に,患者中心のアプローチを掲げた米国糖尿病学会(ADA)/欧州糖尿病学会(EASD)ステートメントの改訂版が発表されました。第一選択薬は従来どおりメトホルミンを全例に推奨していますが,第二選択薬として,チアゾリジン薬,SU薬,DPP-4阻害薬,GLP-1受容体作動薬,インスリンの5剤を同等に推奨しています。ただし,各薬剤の特徴をまとめた表のなかで,HbA1c値低下作用について,チアゾリジン薬を高,DPP-4阻害薬を中間と位置付けています。しかし,日本の臨床現場での経験からは,どうも違うのではないかと感じていました。
 COMPASS studyでは対象130例をシタグリプチン群とピオグリタゾン群に無作為に割り付け,シタグリプチン群は50 mg/日から,ピオグリタゾン群は15 mg/日から開始し,16週目にHbA1c値の改善が不十分なら増量とし24週まで追跡しました。両群の背景因子に有意差はなく,平均年齢約60歳,体重66~67 kg,BMI 25前後で,肥満を除くと日本人の平均的な糖尿病患者さんで,HbA1c(NGSP)値7.4~7.5%でした。
 その結果,両群とも8週後には血糖値,HbA1c値とも有意に低下しましたが,DPP-4阻害薬のほうが8週後の早期から24週まで有意に低下しました(図1)。

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