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開業医院施設インタビュー

医療法人社団三咲内科クリニック

栗林伸一

DIABETES UPDATE Vol.2 No.1, 48-51, 2013

 千葉県船橋市に1993年に開設された三咲内科クリニックは,20年にわたり糖尿病の専門的治療を提供してきた。院長の栗林伸一先生はNPO法人「生活習慣病防止に取り組む市民と医療者の会(愛称:小象の会)」の副理事長をはじめ,数々の糖尿病関連医会で世話人を務めるなど地域からの信頼は厚い。患者さんに長年寄り添いながら,常に最新の医療を提供されてきた栗林先生に,糖尿病診療の方針や患者指導のコツ,スタッフとの連携などについてお話を伺った。

糖尿病診療に携わるきっかけ

―先生が糖尿病を専門にされるようになったきっかけを教えていただけますか。
 私の母親が30代で糖尿病を発症していたことが一つのきっかけです。また,研修医時代から糖尿病の患者さんを診ていましたが,当時(1980年頃)は糖尿病の診療はやり甲斐がないと考える医師が大勢を占めていました。患者数自体が少なく,薬剤の選択肢が乏しかったこともありましたが,一番の理由は「糖尿病の患者さんはいくら生活指導をしても変わってくれない」からと言われていました。
 患者さんは本当に変わってくれないのだろうか――,その疑問への答えを求めることが糖尿病患者さんと向き合っていく私の原動力になったとも言えます。糖尿病治療は直ちに生命を救うものではありませんが,治療的介入により10~20年単位で患者さんの一生涯を変えることができる可能性をもっています。難しくも医師として非常に意義のある仕事だと考え,糖尿病治療に取り組んできました。

治療関係の構築におけるチーム医療の重要性

―長年,糖尿病治療に携わっておられるなかで重要だと感じることは何でしょうか。
 糖尿病治療においては,栄養相談や運動療法などの生活療法が欠かせません。そのためにチーム医療が非常に重要です。私は勤務医時代からいち早くチーム医療の重要性を唱え,看護師や栄養士と協力して生活指導のしおりを作成したり,糖尿病教室を実施したりするなど,その経験は現在もクリニックで活かされています。
 当クリニックのスタッフ数は,看護師5名,管理栄養士1名,臨床検査技師2名,運動指導士3名,事務スタッフ7名ですが,うち5名が日本糖尿病療養指導士(CDEJ)の資格を取得しています。糖尿病は患者さんご自身が生活療法や服薬を実行する治療者でもありますので,まず患者さんの思いをよく聴き(傾聴),次に医療者から情報提供をし,患者さんに治療の必要性に気付いてもらうことが最大のポイントです。つまり患者さんとコミュニケーションを十分にとることが基本ですから,医師だけの力では限界があり,糖尿病の基礎知識ならびに最新情報を備えたスタッフ達の力が大いに役立っています。

栄養相談と必要に応じて運動療法を提供

―糖尿病の治療方針についてお聞かせください。
 勤務医時代は,食事療法と運動療法を確実に提供でき,薬物療法の効果が得られやすい教育入院こそが治療の基本と考えていました。そのため開業してからは効果的な治療方法の構築に試行錯誤しましたが,そのなかで一番効果が得られたのが「栄養相談」だったのです。食事療法について理解していただいたうえで薬物療法や他の治療法の効果が得られるわけですから,栄養相談がうまくいくかどうかで治療方針が決まると言っても過言ではありません。
 栄養相談は,初回は月1回ずつ3回実施し,その後は3ヵ月毎に継続,安定してからも6ヵ月毎に受けるよう勧めています(写真1)。

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