はじめに  近年登場したGLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬が糖尿病診療の現場に与えたインパクトは非常に大きく,特に後者に関しては,その使いやすさから専門医のみならず,かかりつけ医をはじめ糖尿病非専門医による処方も急速に増えつつある。  欧米では,2012年のADA/EASD Position Statementで2型糖尿病治療薬におけるTier 1〔スルホニル尿素(SU)薬とインスリン〕とTier 2(チアゾリジン薬とGLP-1受容体作動薬)の序列がなくなり,メトホルミン単剤で治療効果が不十分な場合に併用療法として追加する薬剤の選択肢として,GLP-1受容体作動薬やDPP-4阻害薬がSU薬,チアゾリジン薬,インスリンと同等に並列して記載されるようになった1)。  日本においては非肥満でインスリン分泌低下が主体の2型糖尿病が多いことから,必ずしも一律にビグアナイドによる治療を第一選択としていない。日本糖尿病学会が編集する「糖尿病治療ガイド2012-2013」では,代謝異常の程度のみならず,年齢や肥満の程度,慢性合併症の程度,肝・腎機能,ならびにインスリン分泌能やインスリン抵抗性の程度を評価して,経口血糖降下薬かインスリン製剤かGLP-1受容体作動薬か,さらにはどの種類の経口血糖降下薬を使用するか決定することが推奨されている2)。  本稿では,急速に普及するインクレチン関連薬の臨床的特徴と,導入時の注意点について述べる。