今回のDiscussion & Educationでは,愛知医科大学病院で開催された「第29回愛知県実践感染症カンファランス」より,多剤耐性緑膿菌(MDRP)による人工呼吸器関連肺炎(VAP)症例についての報告を取り上げる。本報告の後半では, VAPの概念やMDRPの検出法・治療,さらに海外で急速に臨床応用が進む抗菌薬の吸入療法について,近年発表された新たな知見も交えながらご解説いただいた。多剤耐性菌感染症に対する治療の難しさと感染予防の重要性は周知のとおりであるが,直面した場合には迅速な判断と対応を要するため,日頃からの情報収集や準備が必須となる。本カンファランスで示された数々のヒントや知見を,日常臨床に活かしていただければ幸いである。


「症例呈示」

三鴨:本日は山岸先生から,愛知医科大学病院での人工呼吸器関連肺炎(ventilator associated pneumonia:VAP)症例をご紹介いただきます。では既往歴からお願いします。

山岸:症例は60歳の男性,主訴は口腔内の出血です。この方は今回の入院の5年前に食道癌で入院し,化学療法と放射線療法を施行しましたが,その2ヵ月後に右開胸開腹食道亜全摘術とリンパ節郭清,胆嚢摘出術が行われています。