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日本臨床微生物学会総会

(講演)真菌の感受性検査とその臨床的役割 感受性検査成績の臨床への応用

第24回日本臨床微生物学会総会シンポジウム4 2013年2月3日(日)

渡辺哲

感染症道場 Vol.2 No.2, 56-58, 2013

深在性真菌症の動向
 わが国の病理剖検例における深在性真菌症の年次別発症頻度をみると,もともと一番多かったカンジダ症をアスペルギルス症が上回り,その傾向が今も続いている。しかしこれはあくまで剖検例のデータであり,米国のデータでみられるとおり,深在性真菌症罹患率はアスペルギルス症よりもカンジダ症が多いと考えるのが妥当である1)。米国の2001~2007年におけるカンジダ血症の原因菌で最も多いのはCandida albicansであるが,C. parapsilosisがそれに匹敵するほどの勢いで増加しており,non-albicans Candidaが75%とかなり増加してきている2)。わが国における2002年の全国サーベイランスでは4割程度がC. albicansであり,次いでC. parapsilosis,C. glabrata,C. tropicalisの順に多い3)。南米とアジアではC. tropicalisが多く比較的似たような傾向を示すが,欧州や米国ではC. glabrataが多く4),欧州ではC. kruseiも多い4)。

MIC測定の必要性

 千葉県内の多施設調査ではカンジダ血症の原因菌において,C. glabrataとC. tropicalisでフルコナゾール(FLCZ)に対する感受性にばらつきがみられた(表1)。

このばらつきがMICを測定する1つの意義になるのではないかと思われる。また,造血幹細胞移植患者で多くみられる侵襲性アスペルギルス症では,原因菌としてAspergillus fumigatusが圧倒的に多く,A. niger,A. flavus,A. terreusがこれに続く5)。慢性アスペルギルス症においては,日本ではA. nigerが多いという報告もある。アスペルギルス症原因菌のうち,A. fumigatusは各抗真菌薬に対するMICに大きなばらつきはみられないため,現段階ではルーチンのMICの測定は必要ないと思われる6)。A. terreusに関してはアムホテリシンB(AMPH-B)に対する感受性が低い株が多いことから,投与は避けたほうがよいと思われる6)。

アゾール系抗真菌薬の耐性菌

 長崎大学におけるA. fumigatusの薬剤感受性の検討結果では,疫学的カットオフ値(ECV)を超える株がイトラコナゾール(ITCZ)で耐性株が7.1%,ボリコナゾール(VRCZ)で4.1%みられた7)。この要因として,慢性アスペルギルス症症例ではITCZやVRCZが長期に投与されていることが内因性に耐性獲得を誘導しているのではないかと考察されている7)。また最近,ITCZを投与開始してから数ヵ月という比較的早期に遺伝子変異が起こり,薬剤耐性を獲得した症例が報告されている8)。日本は結核後遺症患者が多く,慢性アスペルギルス症症例が欧米と比較して多数存在すると考えられるため,このような傾向が今後強くなる可能性を考えておかなければならない。英国の検討でもアゾール系抗真菌薬による治療期間に治療失敗を起こしており,そのなかにITCZ耐性や,アゾール系抗真菌薬すべてに耐性の株が出てきている9)。アゾール系抗真菌薬には交叉耐性があることが知られており,ITCZ耐性株のうち,VRCZ耐性が65%,posaconazole耐性が74%あるとの報告がある10)。また,オランダでもアゾール系抗真菌薬耐性のA. fumigatusが問題になっているが,農薬のなかにアゾール系抗真菌薬に近い成分が含まれており,それが畑などに大量に散布されることにより環境のなかからアゾール系抗真菌薬耐性株が出現し,ヒトに感染するのではないかとの考察がなされている11)。
 アスペルギルス症患者における原因菌のAMPH-Bに対するMIC値別に致死率をみた検討では,興味深いことにMIC高値の株の感染例ほど生存率は高く,MIC測定値と臨床のアウトカムとの相関が疑問視される結果となっている12)。ただし,アゾール系抗真菌薬耐性株による感染の致死率は90%近くに達する程度とするデータもあり,アゾール系抗真菌薬耐性株に関してはMIC値が臨床の反応性に関係していると推測される。

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