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日本臨床微生物学会総会

(講演)真菌の感受性検査とその臨床的役割 抗真菌薬のMIC測定法と問題点

第24回日本臨床微生物学会総会シンポジウム4 2013年2月3日(日)

前﨑繁文

感染症道場 Vol.2 No.2, 53-55, 2013

薬剤感受性測定の目的と変遷
 薬剤感受性測定の目的は,原因真菌に対して有効な抗菌薬を選択し臨床効果を高めることである。また,医療機関や地域における薬剤耐性菌の動向を観察するためでもあり,新たな抗真菌薬を開発する際にも必要になる。抗真菌薬においては,1880年代に米国で酵母状真菌の薬剤感受性測定法の検討が開始され,1992年にはM27-Pが提案され1997年にM27-Aとして公表された。糸状菌に関しては1998年にM38-Pが初めて提案され,2002年にM38-Aとして公表された。欧州では2002年にEUCAST法が公表され,わが国では1995年に酵母状真菌における日本医真菌学会法が,1998年に糸状菌の日本医真菌学会法が公表された。

各薬剤感受性測定法の特徴

 CLSI M-27A法の適応菌種は酵母状真菌で,ミクロ液体希釈法が中心である(表1)。

接種菌量は0.5×103~2.5×103CFU/mLで,培養温度は35℃。培養時間はカンジダ(Candida)で48時間,クリプトコックス(Cryptococcus)では72時間である。終末点は,アムホテリシンB(AMPH-B)は目視で濁りなし,フルシトシン(5-FC)およびアゾール系抗真菌薬のマクロ液体希釈法は約80%の濁度減少,ミクロ液体希釈法では顕著な濁度の減少である。
 一方で日本医真菌学会法では,終末点に分光光度計を使用し,発育対象の濁度が0.2以上に達した時点でのIC80(80%発育減少)の値をみる。EUCAST法は対象菌種が発酵性酵母のみであり,試験培地に2%グルコースを添加する。また,接種菌量が0.5×105~2.5×105CFU/mLと多く,培養時間が24時間と非常に短いのが特徴であり,終末点は分光光度計を用いる。Candida属における各種アゾール系抗真菌薬の薬剤感受性は,CLSI法とEUCAST法で一致率が非常に高いことがわかっており,相関性があると考えられている1)。日本医真菌学会法は,一部のアゾール系抗真菌薬に対して異常に高いMICを示す菌株が認められたことから2010年には「アゾール系抗真菌薬の終末点判定基準をIC80からIC50に変更する」との提言がなされ改変されている。
 実際の薬剤感受性測定には測定キットが使用されることが多いが,フローズンプレート®栄研/ドライプレート栄研,ASTY,EテストともにCLSI M-27法と一致率が高い。なお,Candida属にはトレーリング現象があるため,培養48時間のみならず24時間の時点でも終末点判定を行い,著しいMICの差を認めた場合は24時間の測定値を採用することで臨床効果と相関性の高いMICが得られる。
 CLSI M-38A法の適応菌種は分生子または胞子を形成する糸状菌であり,測定方法はミクロ液体希釈法で,培地,接種菌量ともにM-27Aと相違ない。接種菌量の調整には分光光度計を用い,培養温度は35℃。培養時間は菌種によって異なるため,MIC測定の前に菌種の同定が重要である。

抗真菌薬に対する薬剤耐性機構

 トリアゾール系抗真菌薬に対するCandidaの耐性機序は,標的酵素P450DMの過剰発現や薬剤排出と考えられており,キャンディン系抗真菌薬に対するCandidaの耐性機序は標的部位であるFks1の変異であることがわかっている2)。一方で,ポリエン系抗真菌薬ではもともとC. lusitaniae,Aspergillus terreusに,トリアゾール系抗真菌薬ではC. glabrata,C. kruseiに,キャンディン系抗真菌薬ではC. guillermondiiとC. parapsilosisに対して感受性が低いので注意が必要である2)。
 口腔カンジダ症におけるフルコナゾール(FLCZ)のMICと有効率をみた検討では,MICが2,4,8μg/mLと上がるにつれて有効率は92,83,37%と下がっており,耐性菌では有効率が悪いことを表わしていると思われる3)。カンジダ血症でも同様にMICが高くなると有効率が下がるが,耐性の症例は非常にまれで実際に把握するのは難しい。抗真菌薬の場合は感受性,耐性を測定しても臨床的意義は少ないと考えられる。

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