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微生物と感染症診療

アスペルギルス症

宮﨑義継梅山隆金子幸弘田邊公一名木稔山越智上野圭吾大川原明子金城雄樹大野秀明

感染症道場 Vol.2 No.2, 20-23, 2013

はじめに
 アスペルギルス症はAspergillus属が原因となる疾病であり,感染症やアレルギー性疾患がある。特に侵襲性アスペルギルス症は,造血幹細胞移植や固形臓器移植などに伴い免疫抑制状態にある患者に発生する深在性真菌症のうち,予後不良で頻度の高いもののひとつと考えられてきた。全身性免疫不全は認めないが肺局所の肺病変としてみられる慢性肺アスペルギルス症や,喘息症状が前面に出る気管支肺アスペルギルス症などがある。

 診断法のうち,簡便な血清診断法に関してアスペルギルスガラクトマンナン抗原(ガラクトマンナン抗原)が臨床で使用されている。本法は,血液疾患患者での有用性は確立していると考えられるが,他の患者群では有用性について議論のあるところである。培養法や沈降抗体法は,慢性肺アスペルギルス症患者では比較的感度の高い方法で,ガラクトマンナン法より有効性が高いと考えられている。アレルギー疾患ではIgEや沈降抗体,皮内反応などが診断に用いられる。
 抗真菌薬療法については,侵襲性アスペルギルス症ではアゾール系抗真菌薬のボリコナゾール(VRCZ)とアムホテリシンBリポソーム製剤(L-AMB)が初期治療の第一選択薬として認知されている。

疫学と感染経路

 日本剖検輯報のデータに基づく久米らによる死亡時における日本の深在性真菌症としては,アスペルギルス症が最も多い(図1)1)。

したがって,死亡に至るような状態の患者ではアスペルギルス症が大きな問題であることを示している。ただし,病理組織学的診断であり真菌学的診断がなされているとは限らず,ムーコル(Mucor)などのAspergillus属以外の糸状菌もある頻度で含まれる可能性は指摘されている。
 感染は,まず経気道的なアスペルギルス胞子の吸入から始まると信じられている。肺や副鼻腔などで胞子が定着し菌糸の進展が始まり病巣が拡大する。特に,間質性肺炎や気腫性肺病変では腐生性病変が拡大すると考えられており,さらに,全身性免疫不全があれば局所の侵襲や血行性に中枢神経系や腹腔内臓器にも播種進展することがある。
 原因菌種として多いのはAspergillus fumigatusであるが,A. nigerやA. flavusなど多くが知られているが,明らかな菌種による差異は知られていない。同定については,従来は培養された糸状菌の形態から分類が行われてきたが(図2),最近では菌種の分類は遺伝学的に決定される。

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