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診断のための検査法

真菌症の血清診断

吉田稔

感染症道場 Vol.2 No.2, 8-11, 2013

 真菌症の血清診断として現在わが国で汎用されているβ-D-グルカンと侵襲性アスペルギルス症の診断法として有用なガラクトマンナン抗原を中心に解説する。

(1→3)-β-D-グルカン(BDG)

 (1→3)-β-D-グルカン(BDG)は真菌の細胞壁の主要な構成成分で,元々はグラム陰性菌の菌体成分であるエンドトキシンの測定法(リムルステスト)に用いられるカブトガニ(図1)の血球抽出物(ライセート)に,BDGと反応する経路が存在することが発見されたことを契機にわが国で開発された測定法である1)2)。

ファンギテック®Gテストを用いてわが国の多施設共同臨床試験が行われ,カットオフ値を20pg/mLとすると,血液領域と呼吸器領域の深在性真菌症41例中37例(90.2%)が陽性となったが,その他の細菌感染症では59例中陽性例は1例もなく,感度90%,特異度100%の優れた成績が得られた。この研究では不明熱が102例認められたが,このうち26例はBDGが陽性で,従来の培養検査では不可能であった早期あるいは潜在的な真菌症の診断が可能であることが示された2)。わが国では,ファンギテック®Gテストは1995年に保険収載され,さらに血液の前処理法を過塩素酸処理からアルカリ処理としてマイクロプレートを用いたカイネティック比色法に改良された(ファンギテック®GテストMK)。これにより一度に多数検体の測定が可能となった。真菌症は従来の培養検査の感度が不十分であり,また侵襲的検査が実施困難な症例が多いことから,本法はわが国で急速に普及した。さらに非濁法によるβ-グルカンテストワコーが1996年に認可を受け,2001年にはβ-グルカンテストマルハも認可された。その後ファンギテック®GテストMKは2012年よりファンギテック®GテストMKⅡ「ニッスイ」に移行している。
 BDG測定は米国でも注目され,米国Associates of Cape Cod社が生化学工業株式会社の技術協力を受け,Fungitell法を開発し3),2004年にFDAの認可を受けた。その後多くの臨床研究が実施され,真菌症の血清診断としての評価は確立し,欧米の診断ガイドラインにも記載されるに至っている4)。
 表1に代表的なBDG測定法の特徴を示す。

カブトガニライセートの種類,血液検体の前処理,その後の測定方法や標準コントロールとして使用するグルカンの種類に各々相違がみられ,測定限界とカットオフ値も異なるため,同じBDG測定法でありながら,測定結果は通常一致しないことに注意が必要である。ファンギテック®GテストMKは一度に多数検体を処理するのに優れているが,β-グルカンテストワコーはシングルタイプで簡便なため,病院の臨床検査部ではこちらを利用する施設も多い。ただし,注意すべきは両者の感度の相違である。両者の標準品をカンジダ(Candida)由来のBDG (Candida Standard β-glucan:CSBG, Candida albicans IFO 1385より精製)と比較するとCSBGに換算したファンギテック®Gテストの測定限界は7.0 pg/mLでカットオフ値は36.0pg/mLであるが,β-グルカンテストワコーはそれぞれ111.6 pg/mLと204.6 pg/mLとなる5)。感度の点ではファンギテック®Gテストが明らかに優れている。血液領域で経験する侵襲性肺アスペルギルス症(invasive pulmonary aspergillosis:IPA)のような早期診断が求められる場合は,感度を優先して検査法を選択すべきであろう。
 BDGはCandida,アスペルギルス(Aspergillus)の他にトリコスポロン(Trichosporon)やフサリウム(Fusarium)など比較的まれな真菌症やニューモシスチス肺炎などでも陽性になるため6),あくまでスクリーニングテストとして利用し,他の培養検査や臨床所見あるいは画像診断で鑑別を行う必要がある。一方接合菌では陰性で,クリプトコックス症もBDGの含有量が少ないために肺炎や髄膜炎では陰性であるが,菌血症の場合には陽性となる。

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