はじめに  黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は誰もが保有する菌であり,体の各所に常在している。本菌は普段はおとなしくしているにもかかわらず,あるときは牙をむいて感染症の原因となりうる。本菌によって引き起こされる疾患の種類は皮膚の表在性の感染から体内深部の感染症,あるいは食中毒までさまざまである。また,どの種類の感染症においても本菌が分離される頻度は高い。さらに,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-resistant S. aureus:MRSA)の存在は重要であり,近年,市中感染型MRSAも話題となっている。われわれは改めて黄色ブドウ球菌の重要性を認識し,変化を遂げる本菌に対して適切な対応をとれるようにならなければいけない。